千葉市は心疾患患者のリハビリをアプリを使って支援する(7日、千葉市役所)

千葉市はスマートウオッチやスマートフォンを活用し、心疾患を抱える人の健康維持を支援する実証実験を始めた。外来のリハビリに対応する病院が限られるなか、市がNTTコミュニケーションズと連携し、生成AI(人工知能)技術などを生かして患者の健康管理を後押しする。市民の健康づくりや病気の再発防止に役立てる。

11月から2025年3月下旬まで実施する。急性期病院などへの入院経験があり、医師の許可を得た患者が対象で、市内3病院で最大50人を募集。市が対象者にスマートウオッチを無償貸与し、看護師資格を持つ相談員や医師の助言を受けながら、NTTコムのアプリ「みえるリハビリ」を使用して健康維持の運動などに取り組んでもらう。

患者はスマートウオッチを装着し、主治医との相談であらかじめ設定した目標数値に沿って自宅などで運動する。運動時間や心拍数、歩数など手元の数値を見ながら、自ら運動の強度を加減する。アプリは生成AIも搭載し、登録した利用者の趣味や嗜好などに基づき「映画の登場人物になりきって早歩きを」などのメッセージも出す。

スマートフォンアプリ「みえるリハビリ」で運動時間や心拍数を管理する=NTTコミュニケーションズ提供

期間中は委託先の東京海上日動メディカルサポート(東京・港)の看護師が相談員として定期的に患者に電話連絡し、医師が常駐する電話窓口も24時間体制で健康に関する相談を受け付ける。今後は主治医らもアプリ上のデータに基づいた助言ができるようにする予定だ。

心筋梗塞などの心疾患は日本人の死因の第2位で、千葉市でも1万人ほどの患者がいるとされる。適切な運動習慣で再入院が4割程度減少するとの研究結果もあり、リハビリ目的の適度な運動が肝心だ。一方で自主的な運動では自身で加減がわからず、運動を控える傾向があるという。

心疾患患者などを受け入れる急性期病院が市内に数カ所ありつつも、外来のリハビリに対応できる場所が1カ所に限られていた千葉市にNTTコムが打診し、実証が実現した。

市では22年に「スマートシティ推進ビジョン」を策定し、「ビジネス」や「学び」など5領域で情報通信技術(ICT)を活用したまちづくりを進めてきた。「暮らし」では健康寿命の延伸を掲げ、22年度に実施したウエアラブル端末のデータに基づく遠隔の特定保健指導事業は実証後に「実装」に至った。

今回の実証も多くの市民が健康的な運動習慣をつけてもらえる環境を整備する狙いで、市は25年度以降の実装も視野に入れる。神谷俊一市長は「心疾患は再発を繰り返しやすく、患者の負担になるだけでなく入退院で病床の圧迫、医療費の増大も招く。日に日に進歩するICTやAIといった技術を市政運営に活用し質の高いサービスを実現していきたい」と話している。

(丹田拡志)

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