今秋に発売された新型スマートフォン「iPhone16」シリーズ(東京都渋谷区のアップルストア表参道店)

ソニーグループが8日発表した2024年4〜9月期の連結純利益(国際会計基準)は前年同期比37%増の5701億円だった。新型の半導体画像センサーの歩留まり(良品率)が改善したところに、米アップルが最新iPhoneに採用したのが追い風となった。先端品の牙城を守り、競合の韓国サムスン電子の追い上げをかわす。

24年4〜9月期の売上高は2%増の5兆9172億円、営業利益は42%増の7341億円だった。為替相場が円安に振れたことも業績を押し上げ、ゲーム、半導体、エレクトロニクスの3事業で636億円の増益要因となった。十時裕樹社長は「変化の激しい事業環境のなか、グループ全体で持続的に成長している」と述べた。

画像センサーを中心とした半導体事業の営業利益は2.2倍の1290億円と、全6事業のうち伸び率が最も大きかった。スマホ各社がカメラ性能を競うなか、画像センサーの単価が上昇している。人工知能(AI)機能を搭載した機種が買い替え需要を喚起し、米調査会社IDCによると、7〜9月のスマホの世界出荷台数は前年同期から4%増えた。

iPhone向けの画像センサーが好調だった

新型の画像センサーが今秋発売したiPhone16シリーズの一部機種向けに採用されたことが追い風となった。逆光など明暗差の大きい場面でも白飛びしにくいのが強みで、夜景など暗い場所でも高画質の写真が撮影できるのが評価された。

画像センサーは光を受け取って電気信号に変える素子と、電気信号を制御する素子などで構成する。従来は2つの素子を横方向に並べていたが、新型センサーでは縦に積む構造にし、光を取り込める量を2倍に増やした。

ただ、積層の構造は製造が難しい。23年に新型センサーの量産を開始した当時は歩留まりが上がらず、24年3月期に約350億円の減益要因となった。開発と製造部門が連携して不具合の原因を調べるなど生産改善に取り組み、iPhone16向けの出荷の本格化に間に合わせた。

半導体子会社のソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長は「スマホの動画撮影の需要が高まり、さらなる性能向上が求められている」と強調する。新型センサーの量産を軌道に乗せ、ライバルのサムスン電子に対するリードを保ちたい考えだ。

ただ、25年3月期通期では半導体事業の営業利益を前期比29%増の2500億円と、従来予想から250億円引き下げた。iPhone16は生産縮小が海外メディアで報じられており、「顧客の生産計画見直しに画像センサーの販売計画を合わせた」(十時氏)という。

iPhoneなどスマホ向けで収益を稼いでいる間に、自動車や工場の生産ライン向けなど新規の成長領域を開拓できるかが今後の焦点となる。

24年4〜9月期の連結業績を事業別にみると、ゲーム事業の営業利益は前年同期比2.1倍の2040億円に増えた。9月発売のアドベンチャーソフト「アストロボット」などの販売が好調だったほか、プレイステーションの会員サービスで高単価プランの契約が増えた。音楽事業は版権収入などが伸び、14%の増益だった。

オンライン記者会見する十時社長(8日)

次期米大統領がドナルド・トランプ氏になり、関税政策や米中関係、為替変動など経営を取り巻く環境が変化する可能性がある。十時氏は「米国が世界経済や地政学に及ぼす影響は非常に大きく、我々の事業にも関連してくる。将来起こることを予見してできることをやる」と話した。

ソニーグループは最先端半導体の量産を目指すラピダスに対して追加出資する意向だ。十時氏は「半導体産業は日本経済の発展、経済安全保障の面で重要だ」と指摘。「半導体エコシステムが強化されれば人材の拡充、供給網の強化につながる。業界に身を置く企業として、一定の貢献をしていきたい」と述べた。

(佐藤諒、湯浅鏡花)

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