米大統領選で「米国第一」を掲げたトランプ氏の勝利を受け、円安ドル高の進行が再加速する観測が強まっている。減税や関税引き上げなどトランプ氏の政策が米国内のインフレ(物価上昇)を助長し、外国為替市場にも波及するとの見方からだ。円安ドル高が急速に進めば、輸入品やエネルギー価格の急上昇につながるため、日本の家計への打撃になる。(白山泉)

◆移民送還で人手不足インフレ?

値上げが続く食品スーパー=10月7日、アキダイ関町本店で(川上智世撮影)

 米国経済は賃金やコストの価格転嫁が進み、インフレになりやすい傾向がある。そこにトランプ氏が公約通りの経済政策を実施した場合、インフレを加速させかねない。所得税などの減税は、消費をさらに過熱させるためだ。  インフレが懸念される政策は減税だけではない。関税引き上げが米国内の輸入物価を上昇させるほか、不法移民を強制送還させれば人手不足を招き、賃金上昇を通じて商品価格の値上がりにつながりかねない。

◆円安…食品もガソリンも高値に

 またインフレが再燃すると、米国の利下げペースが遅れるとの観測が強まりドル高円安につながる。実際トランプ氏の勝利を受け、円安がさらに進み、7日の東京外国為替市場は1ドル=154円台をつけた。  円安は日本国内への輸入品価格を上昇させる。海外に依存する飼料価格も高騰するので、国産食品の価格にも影響しかねない。東京都練馬区のスーパー、アキダイの秋葉弘道社長は「食品業界にとって円安で良いことはない」とすでに身構える。食品だけでなく、ガソリンや電気料金への値上がりにも波及する。

◆関税引き上げで雇用悪化の懸念も

 トランプ氏の公約のうち関税の行方をとりわけ警戒するのは、みずほリサーチ&テクノロジーズの松浦大将氏だ。「議会の合意が必要な財政政策と異なり、大統領権限で引き上げられる。常にそのリスクを考えなければいけなくなる」  日本に対しても関税が引き上げられれば、輸出企業の採算が悪化し、国内の雇用にも影響が出かねない。

 日米の物価 短期的には日米の金利差、長期的には国力や貿易構造などが為替水準に影響するとされる。2022年以降、米FRBはコロナ後のインフレ収束のため金利を引き上げたが、日銀はマイナス金利を続けたことで金利差が広がり円安が進行。食料やエネルギーなど輸入品の価格が上昇し、物価高を招いた。日銀は今年3月にマイナス金利政策を解除。米国は利下げに転じる中で、円安の勢いは収まっていた。



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