日産自動車が世界戦略を抜本的に見直す。7日、世界生産能力の20%削減や世界9000人の人員削減、三菱自動車の持ち株34%のうち10%の売却をすると発表した。あわせて2025年3月期の通期の最終損益予想を未定(従来は前期比30%減の3000億円)とした。米国や中国で商品力の低下により採算が悪化しており、大規模なリストラで立て直しを図る。
内田誠社長は11月から報酬の50%を返上するとも公表した。他の経営幹部も自主返納する。同日オンラインで記者会見した内田氏は、収益構造の悪化について「大きく責任を感じている」と述べ、「日産を再び成長軌道に戻す」と強調した。前期に5円だった中間配当は見送り、今期の年間配当予想も25円から未定とした。
日産は主戦場の米国や中国で不振に直面している。同日発表した24年4〜9月期の純利益は前年同期比94%減の192億円だった。新型コロナウイルス禍の影響で赤字だった20年以来の低水準に落ち込んだ。米国で販売台数の規模を維持するために販売店に支払う奨励金を積んでいる点が重荷となる。
日産はトヨタやホンダと違い、現地で普及が進むハイブリッド車(HV)を展開できていない。在庫も膨らみ、両社より奨励金を積まないと売れない悪循環に陥っている。中国は販売台数が落ち込んでいる。
米中では稼働率の低迷が深刻だ。英調査会社グローバルデータによると、24年予測の日産グループは米国が60%、中国が43%で、コロナ禍前の19年と比較するとそれぞれ10ポイント、38ポイント低下している。
日産は日本や中国、米国やメキシコなどで幅広く工場を展開している。現状の世界生産能力は500万台弱で、2割削減すると400万台弱となる。内田氏は能力削減について「場所と時期については申し上げられない」と話した。社員数は13万人のため、仮に9000人全てが社員なら単純計算で1割近い人員削減となる。
ただ年350万台の販売でも収益性と現金創出を確保できるようにするとした。3月に27年3月期の世界販売を24年3月期(344万台)比で100万台増やすとした中期計画は、実質的に取り下げる形となった。
三菱自株の10%売却については「将来の成長機会に向けて財務の柔軟性を高める」(内田氏)とした。三菱自が自社株買いで吸収する。日産にとっては700億円近い資金調達となる。
25年3月期予想の営業利益は前期比74%減の1500億円とした。従来予想(12%減の5000億円)からは3500億円下振れし、今期2度目の下方修正となった。一連の削減に伴うコストを精査するため、最終損益は未定とした。今期の世界販売台数見通しは7%減の320万台と従来予想比で25万台引き下げた。
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