東北電力の女川原子力発電所2号機が再稼働し、30日未明に核分裂反応が持続する「臨界」に達した。2011年に東日本大震災が起きてから13基目で、東日本の稼働ゼロはようやく解消された。
事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても事故後初の稼働で、大きな節目といえる。事故の重い教訓を踏まえ、安全確保を大前提に運転にあたる必要がある。
再稼働で先行した西日本と比べて東日本は電力供給に余裕がなく、料金も高止まりしていた。今後は状況の改善が期待できる。生成AI(人工知能)の普及に伴うデータセンターや半導体工場の新設で、今後は電力需要が増える見通しだ。成長産業を国内で育てるためにも、安定した脱炭素電源である原発への期待は増している。
同じBWRは中国電力島根原発も12月に再稼働を予定する。東京電力の柏崎刈羽原発でも準備が進む。女川の再稼働を機に、既存原発の活用を進めてもらいたい。
東北電力は防潮堤のかさ上げや耐震補強などの安全対策に約5700億円を投じた。それでも不安に思う住民や市民は多い。施設は13年あまり停止し、運転経験のない現場社員が4割に達する。
樋口康二郎社長は「安全確保を最優先に対応する」との談話を発表した。11月7日に発電・送電を始めた後、いったん停止させ、設備に異常がないか再点検したうえで12月に営業運転へ移る計画という。機器の状況を確かめながら慎重に作業を進めてほしい。
地域や社会の理解を得る努力も欠かせない。万全を期しても想定外のトラブルは起こりうる。異常があった場合、軽微でもためらわず作業を止め、情報を積極的に公開すべきなのは言うまでもない。
原発本体の安全対策と併せて、複合災害時の避難対策の強化も急がねばならない。原発が立地する地域では、地震や大雪などの自然災害と原発事故が重なった際の対応を心配する声がある。
元日に発生した能登半島地震では道路や海路の寸断が相次ぎ、北陸電力志賀原発の周辺地域で多くの集落が孤立した。建物の被害がひどく、放射線から逃れる屋内退避ができない課題も浮上した。
政府は安全確保を大前提に原発を最大限活用する方針だ。避難用道路の整備や退避施設の耐震化を国が主導し、原発に対する国民の信頼回復に努める責務がある。
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