沖縄本島で、テーマパークなどの開発がこれまで観光施設がなかったエリアに広がっている。南部の豊見城市ではミニチュアと拡張現実(AR)が特徴の屋内型施設が今春開業したほか、北部では2025年夏の開業を目指してジャングルがテーマの大型施設の建設が進む。今後見込まれる観光客増に備え、人材育成などの取り組みも動き出している。
これまで観光施設が乏しかった那覇市より南部にある豊見城市で4月に開業した屋内型のテーマパーク「Little Universe OKINAWA(リトルユニバース オキナワ)」。ミニチュアとARを組み合わせることで深い没入体験を味わえるのが特徴だ。
例えば館内の琉球王朝時代の街並みをミニチュアで再現したコーナーでスマホをかざすと、現在の地名が画面上に表示されて景色を照らし合わせられる。360度の映像や光るオブジェなどで異世界を演出するなど「新感覚ハイブリッドエンターテイメント」をうたう。
屋内施設のため、天候に集客が左右されない利点もある。オープンから12日で来場者が1万人を超えるなどの人気ぶりで、特に家族連れが目立つという。
同様に美ら海水族館(本部町)など限られた施設しかなかった本島北部でも、ゴルフ場跡地で大型テーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」の建設が進む。広さは約60ヘクタールで、今帰仁(なきじん)村と名護市にまたがっている。世界自然遺産の森林「やんばる」にも近い。
開発計画は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)を再建した森岡毅氏のマーケティング会社、刀(同市)が主導する。ジャングルのような森の中で冒険体験をしたり、気球に乗って海を見渡したり、恐竜から逃げたりするなどといったアトラクションを構想。飲食施設や温浴施設も用意する考えだ。
沖縄県の観光客数は23年に823万5000人で前年比45%増と、新型コロナウイルス禍からの急速な回復を見せる。特に国内客は724万9000人で過去最多だった。沖縄の人気スポットの一つで、19年の火災で大半が焼失した首里城(那覇市)も再建中だが、23年度の工事の見学者が96万人に上るなど集客に一役買っている。
再建工事は部分的に公開しており、入場料を大人の場合で半額以下の400円に引き下げている。7月からは特徴的な赤瓦を屋根にのせる「瓦ぶき」の作業を開始。再建が進む首里城のうち、正殿については26年秋に完成する予定だ。
今後も観光客の増加が見込まれる沖縄県。県内ではその波及効果を広げるため、移動の利便性向上により人気観光地の回遊性を高める次世代交通の導入や、企業の垣根を越えた観光人材の育成構想が浮上している。
次世代交通を検討しているのは豊見城市で、23年に自走式ロープウエー「Zippar(ジッパー)」の開発会社と連携協定を結んだ。人気観光地の瀬長島(同市)と市内各地を結ぶ構想で、市内を周遊することでより長く滞在してもらう狙いがある。沖縄都市モノレールの駅と接続して他市と往来しやすくする方針だ。
企業の枠を超えた人材育成は、ジャングリアが検討している。同施設は計1200人の雇用を計画しているが、沖縄も人手不足が深刻だ。そこで運営会社、ジャパンエンターテイメント(名護市)が施設開業後の26年度に100人分の宿泊設備がある人材育成拠点を名護市内に開設する。
この拠点を長期滞在型のインターンシップ(就業体験)に活用する。同社はホテルなど周辺の企業との合同インターンも視野に入れており、参加を呼びかけている。複数の職種を効率良く体験できることをアピールすることで、県内外からの学生の呼び込みにつなげたい考えだ。
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