イオンは22日、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の低価格帯シリーズについて約500品目の一部を実質値下げすると発表した。物価高で消費者の節約志向が高まっていることに対応する。同社の小売部門の営業損益は悪化しており、粗利益率が高いPBの販売を増やすことで回復を目指す。
9月から黄色ラベルの「ベストプライス」で350品目の新商品と150品目の一部改良品を順次投入する。このうち、11月発売の「お好みの濃さで楽しむコーンポタージュ」(321円)はポタージュの粉を1食ずつ小分けしていた袋をやめて、大きな袋に16食分の粉をまとめた。既存の「つぶ入りコーンクリーム(ポタージュ)8食入」と単純比較すれば1食あたり10円実質値下げした。
「たまごのおいしさまるごとマヨネーズ」は従来、中高価格帯で赤いラベルの「トップバリュ」で販売していたが、11月からベストプライスにブランド変更する。原材料の卵の仕入れ価格が落ち着いてきたことで、製品価格は3月に比べ20円値下げした。
イオンは2024年3〜8月期の連結決算で純利益が前年同期比76%減になった。主要8事業のうち赤字になった総合スーパー(GMS)など小売部門を中心に5事業で営業損益が悪化している。賃上げに伴う人件費など経費がかさんだ。国内では物価高に賃上げが追いつかず、消費意欲も低迷する。
8月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月と比べて2・8%上昇し、4カ月連続で伸び率が拡大した。8月の実質賃金は前年同月から0・6%減少し、3カ月ぶりにマイナスに転じている。
内閣府の消費動向調査では「消費者態度指数」が直近の9月が36.9と年初(38.1)より1.2ポイント下げている。指数の構成要素の一つである「暮らし向き」は9月に34.4と前月を0.3ポイント下回った。
イオントップバリュ(千葉市)の土谷美津子社長は22日の記者会見で「お客様が店頭でたたずみ、1つの商品を買うか買わないか悩む姿が散見される。店舗からも顧客の生活に苦しむ声が届いている」と話す。
イオンの源流の「岡田屋」には「下げにもうけよ 上げでもうけるな」の家訓がある。不況期に値下げして商品の回転率を上げ、収益を確保してきた歴史がある。
PBはメーカー品に比べ粗利益率が10ポイント程度高いとされる。今回の値下げでも「粗利益率は維持している」(土谷氏)という。スーパーなど小売事業の経営が厳しい中でもPBの販売数を増やし、利益の上積みをはかる。
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