住友金属鉱山が福島県楢葉町で電気自動車(EV)向け電池部材事業を始めて10年を迎えた。2014年、東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難指示が出た同町の工業団地に大手企業としていち早く進出した。住友鉱山の松本伸弘社長は「復興支援として進出し、なくてはならない拠点に成長した」と述べた。
21日、住友鉱山が100%出資する正極材の生産子会社、住鉱エナジーマテリアル(同県楢葉町)で設立10周年を祝う記念式典を開いた。取材に応じた住友鉱山の松本社長は「進出以降、生産性を向上してきた。電池は競争が厳しく今後もコスト削減に取り組む。増産の検討も進めたい」と述べた。
住友鉱山は車載向けリチウムイオン電池の主要部材の正極材の大手。住鉱エナジーで生産するニッケル酸リチウムの正極材は全量をパナソニックホールディングス(HD)傘下のパナソニックエナジーに販売する。同社を通じて米テスラのEVが採用しているとみられる。足元では欧米などでEV販売は減速気味だが、中期的には拡大が続くとみて、住友鉱山は足元で年間6万トンの生産量を30年に18万トンに伸ばす計画だ。
住鉱エナジーは6万トンのうち1万2千トンの正極材生産の後工程に関わる。住友鉱山の愛媛県の工場などで生産した中間品を、焼成して正極材に仕上げる工程を担う。14年の会社設立後、東日本大震災の影響で生産停止していた日本化学産業の工場建屋を借り受ける形で住友鉱山が設立し、避難指示解除後の16年に工場を稼働した。生産設備には約70億円を投資してきた。
記念式典にはパナソニックエナジーの只信一生社長も出席した。只信氏は住友鉱山の正極材を「不純物が混ざらない安全性の高い材料だ」と評価。住鉱エナジーについては「米国で(パナとテスラが共同運営する電池工場)ギガファクトリーを設立し、EV市場の拡大の流れを作った時に主要材料を供給した工場だ」と話した。
住鉱エナジーの雇用者は当初は30人だったが現在は100人を雇用する。楢葉町の松本幸英町長は「増産になればさらに大きな雇用につながる。期待している」と話した。
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