東京メトロのIPOは売り出し価格を決めるブックビルディング(需要申告)で個人投資家の応募が好調だった

東京地下鉄(東京メトロ)は15日、新規株式公開(IPO)に伴う売り出し価格を1株あたり1200円にすると発表した。投資家の需要を調査して売り出し価格を決めるブックビルディング(需要申告)では個人投資家の応募が好調となり、仮条件の上限で価格が決まった。上場時の時価総額は6972億円となり、2024年では最大級の上場となる。

東京メトロはブックビルディングで株式の売り出し価格を決めた。8〜11日の需要申告期間にどれだけの需要があるかを把握し、あらかじめ提示した1株あたり1100〜1200円の仮条件から最終的な公開価格を決めた。関係者によると「応募倍率は比較的好調だった」と話す。

もともと東京メトロの発行済み株式総数5億8100万株を保有していた国(53.42%)と東京都(46.58%)が保有株を売り出した。売却後の保有比率はそれぞれ半分になる。公開価格が決まったことで、証券会社への手数料を考慮しない単純計算では国に約1862億円、東京都に約1624億円の売却収入が確定したことになる。

上場にあたって、1162万株を東京メトロ従業員持ち株会に売却する「親引け」を実施した。上場後の発行済み株式の保有割合は国が26.71%、東京都が23.29%、東京メトロ従業員持ち株会は2.00%となる見込み。海外売り出し用の株式数は 5810万株で、予定では国内の投資家には2億3240万株が出回る。

「我々は鉄道会社。まずは普段から利用していただいている沿線の皆さまに買っていただくことを想定している」。東京メトロの経営幹部はこう話し、個人株主を意識した還元策を打ち出す。

営業利益率19.6%という稼ぐ力を生かして配当性向40%超を掲げる。売り出し価格から算出した配当利回りは3.3%になる。その他、所有株式数に応じた乗車証や同社関連施設の優待券などを発行している。

鉄道会社の株主構成は個人投資家の構成比率が比較的高い。例えば、南海電気鉄道は個人・その他の割合が48.39%、阪急阪神ホールディングスは40.35%となる。日本取引所グループによると2023年度の所有者別株式数で個人・その他が保有する割合は全体の22.6%だった。松井証券の窪田朋一郎アナリストは「鉄道といったなじみのあるインフラ会社のIPOということもあり、個人投資家の間で非常に興味関心が高い」と話す。

一方、ある資産運用会社の責任者は「個人投資家向けに仮条件が低めに出てきた印象だ」としつつ「(個人投資家が注目しやすい)配当利回りでみてもより良い選択肢は他にもある。成長戦略もなくキャピタルゲインを求めて買う銘柄ではない」と見る。また「国と東京都がまだ株式の半数を持っている段階で、少数株主にとって企業価値向上につながる意思決定がなされるかは不透明だ」と語った。

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