NTT子会社で、音響関連事業を手掛けるNTTソノリティ(東京・新宿)が耳を塞がないヘッドホンを発売した。商品開発のコンセプトは「没入ではなく共存」。耳を密閉しないため音楽を聴きながらも周囲の人の会話などの環境音を聞き漏らすことがない。
「nwm ONE(ヌームワン)」は従来のヘッドホンのイヤーパッド部分をリング状のパーツにし、そこにスピーカーをぶら下げたような近未来的なデザインだ。耳に当てずに、耳の角度に合わせてスピーカーの位置を調整できる。軽い着け心地で耳が蒸れることがないため、長時間利用にも適する。
ダークグレイとライトグレイの2色展開。オープン価格だが、アマゾンや楽天などの電子商取引(EC)サイトでは3万9600円で販売している。日米に続いて2024年度中には中国で販売を始めるなど、海外展開にも力を入れる。
一般的なノイズキャンセリング機能を搭載したイヤホン・ヘッドホンは遮音性に優れ没入しやすい。一方で、周囲の音や呼びかける声に気付けないことで思わぬ危険やコミュニケーションロスが起こる場合がある。
同製品は耳を塞がないため装着しながらでも近づいてくる車や自転車などの環境音、家族や同僚の声掛けなどに気づくことができる。空気伝導で音を伝えるため、骨伝導イヤホンのような振動も気にならない。
NTT独自の「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)」と呼ぶ技術で音漏れを最小限に抑える。音は波形を反転した波形(逆相)を当てると打ち消し合う性質を持つ。この原理を応用し、耳元360度付近に音をとじ込めて音漏れを最小限に防ぐ。イヤーパッドで耳を完全に覆わないため圧迫感も感じない。
利用用途は音楽を楽しむだけにとどまらない。ヘッドホンはインカムとしても利用できるため、新型コロナウイルス禍を機に定着したオンライン会議などでの需要も見込む。マイク部分に雑音を取り除いて話者の声だけを届けるNTTの特許技術「Magic Focus Voice」を搭載している。オフィスの自席やカフェからでも会議に参加できる。
スポーツ観戦の新たな楽しみ方も提供する。7月27日開催の「明治安田Jリーグワールドチャレンジ2024」ではNTTソノリティの耳をふさがない開放型のイヤホン・ヘッドホンを貸し出した。観客はオリジナルの実況解説を聴きながら、演出音や歓声など臨場感も感じることができた。
今後、NTTソノリティはスタジアムやアリーナなどで実施する同様のイベントを検討し、スポーツやエンターテインメント分野にも注力していきたい考えだ。(田中瑠莉佳)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。