明治や日本ハムなど食品大手9社は7日、乳製品や加工肉といった冷蔵食品の物流で連携すると発表した。賞味期限が短いため毎日配達し、温度管理コストもかさむ冷蔵品は、食品業界のなかでも「物流2024年問題」への対応が遅れた。配送頻度の削減を小売りと交渉する予定だ。

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「チルド商品(冷蔵品)を持続的に届けることが厳しい環境になっている。これまで当たり前としてきた納品条件や商慣習の見直しが必要だ」。都内で9社幹部が集まった記者会見で、明治の伊賀仁生産物流プロセス戦略本部長はこう話した。

9社は「チルド物流研究会」を立ち上げた。明治ホールディングス(HD)の食品子会社の明治と雪印メグミルクや森永乳業といった乳製品メーカー、日清食品HD子会社の日清食品チルドと日清ヨーク、食肉大手の日本ハム、伊藤ハム米久HD、プリマハム、丸大食品が参加する。

業種をまたいで交渉力を高め、商習慣の見直しを小売りに求める。発注日を納品の前日から2日前に変更して1度の注文量を増やしてもらい、数日おきにまとめて配送することなどを想定する。発注から納品まで時間ができれば、複数のメーカーによる共同配送にも取り組みやすくなる。25〜30年にかけて段階的に実現する計画だ。

コストは常温品の2倍

冷蔵品は物流の負担軽減の議論から取り残されてきた。食品には常温、冷蔵、冷凍という3種類の管理温度帯があるが、牛乳やヨーグルト、チーズ、ソーセージといった冷蔵品は効率化の難易度が高い。要因の一つは2〜4週間程度と短い賞味期限だ。在庫を抱えることが難しく、小売店に毎日欠かさず配送するのが基本とあって「日配品」と呼ばれる。

常温では味の素など5社が19年に共同物流会社F-LINE(エフライン、東京・中央)を設立し、冷凍では24年6月に味の素冷凍食品やニチレイなど5社が共同配送などで連携すると発表した。

冷蔵品は小売りから注文が入ると数時間後にはメーカーの工場から小売りの物流センターに届けられ、翌日に店頭に並ぶ。運転手の残業制限で輸送能力が不足する24年問題の影響などにより特売商品の輸送は困難になっていた。

小売店が在庫を持つことが難しい冷蔵品は物流効率化が遅れていた

冷蔵品は配送コストが高く物流網を維持するには効率化が避けられない。一般的にセ氏0〜10度程度の低温で保管・輸送し、冷蔵車や冷蔵庫の電気代などがかさみ、物流コストは常温品の2倍に上ることもある。そのため国は企業の参考になるよう冷蔵品の標準的な配送運賃を常温より2割高く設定している。ただ足元では少し高い程度にとどまっており、コストを十分吸収できていない。

これまでも個別の取り組みはあった。明治や森永乳業など乳業大手は一部地域で共同配送を手がけてきた。しかし、余裕のない納品ルールなどが温存されたままでは付け焼き刃となり、抜本的な解決につながらない。

小売り側も理解を示し始めている。食肉大手4社は23年12月にトラック運転手の作業負荷軽減策を発表し、翌々日配送の導入や毎日配送の見直しなどの交渉を開始した。運転手による店頭での陳列や値付け作業などの付帯業務は足元ではほとんど無くなったという。

スーパーマーケットが物流効率化を目指す「SM物流研究会」は加盟社がライフコーポレーションやイトーヨーカ堂など16社に増え、今後は生鮮品や冷蔵食品の効率化にも取り組む方針を示している。

賞味期限2カ月の牛乳

交渉の成功にはメーカーも汗をかく必要がある。解となるのが技術革新だ。牛乳の賞味期限はかつて約7日だったが生産装置の殺菌徹底や容器の改良で2週間に延ばした歴史がある。森永乳業は賞味期限が約60日の牛乳を投入した。ハム・ソーセージ業界では真空パックを導入して、賞味期限を延ばしている。小売店は在庫を持ちやすくなり、配送にも余裕が出る。

物流改善を助言するNX総合研究所(東京・千代田)の大島弘明顧問は「賞味期限が短く、各社が物流の条件を擦り合わることが難しかった。メーカーが一丸となり、小売店や卸業者、消費者から理解を得られるのかがカギとなる」と指摘する。

4月から、トラック運転手の時間外労働が年960時間に制限され、人手不足がより深刻となっている。野村総合研究所の予測では、30年度に運転手は36%不足する。

毎日配送などの商習慣が形作られた背景には新鮮さを求める消費者ニーズに応えようと小売りが競い合ってきたことがある。これが物流現場に負担を強いる結果となり、食べられるのに捨てられる食品ロス問題も招いてきた。企業と消費者の双方の意識改革が伴わないと商品が運べなくなる未来が現実のものとなりかねない。

(行方友芽、西頭宣明、大林広樹)

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