板金加工機世界大手のアマダは27日、主力事業所の生産改革を発表した。改革の目玉は二つ。アマダに部品を納めるメーカーと生産計画などの情報を共有するオンラインサービスの導入と、組み立て工程の細分化による生産性向上だ。同社の主な顧客は板金加工を営む町工場。カイゼンで納期やコストを最適化し世界の町工場の経営を支える。
ビジネスTODAY ビジネスに関するその日に起きた重要ニュースを、その日のうちに深掘りします。過去の記事や「フォロー」はこちら。「地政学リスク拡大による部材の不足感、顧客ニーズの多様化や短納期化に伴う生産効率への要求はますます高まっている」。アマダの富士宮事業所(静岡県富士宮市)で開かれた記者発表会で27日、山梨貴昭社長はこう強調した。
発表会では部品メーカーを支援するサイトの立ち上げを明らかにした。アマダの生産計画や発注情報をリアルタイムで共有するサイトで、23年12月から本格運用を始めたという。部品メーカーの生産性向上につなげる狙いがある。
支援サイトを利用する部品メーカーの1社が関東精工(静岡県富士宮市)。部品製造では必要な関連部品をアマダが一括で調達し、部品メーカーに供給するケースがある。従来は部品の供給時期が関東精工にうまく伝わらないことがあり、製造工程がスムーズに進まないといった課題があった。
サイトの活用で情報共有されるようになり「支給時期から逆算して生産計画を見直せるようになった」(関東精工の担当者)。足元でサイトを利用する部品メーカーは国内5社にとどまるが、アマダは25年以降に海外メーカーも含めて50社に引き上げる目標を掲げる。地政学リスクが高まる中でも製品供給を途切れさせないため、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化を図る。
工場での生産工程のカイゼンも進めてきた。主力製品のファイバーレーザー加工機の生産ラインでは23年から作業を細分化。従業員が特定の業務に集中することでリードタイムの短縮につながったほか、ラインのレイアウト変更で使用できるスペースも拡大した。従来ラインに比べて生産性は30%向上したという。
アマダの24年3月期の売上高にあたる連結売上収益(国際会計基準)は4030億円、自己資本利益率(ROE)は7.9%だった。31年3月期には売上収益を5000億円、ROEを10%以上とする目標を掲げる。同期の海外売上高比率は66%と、計画の基準年の23年3月期に比べ5ポイント増やす。
富士宮事業所はアマダのマザー工場にあたる。甲斐不二雄上席執行役員は「製品をつくるうえでのノウハウは米国やフランスといった拠点との連携を今後も強化していきたい」と話す。
板金加工機メーカーでは独トルンプとアマダの2強体制が続くなか、海外シェアの獲得には海外拠点で地産地消の体制を築き、コストや納期で競争力を高めることが不可欠になる。富士宮事業所で積み重ねた成果をスピード感をもって横展開できるかが売上収益5000億円達成のカギになりそうだ。
(細田琢朗)
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