日本製鉄の今井正社長兼最高執行責任者(COO)は26日の記者会見で、USスチール買収計画について「(米当局の)審査が延長になったのは事実。それでも楽観はできない」と述べた。審査が延びたことを日鉄幹部が公の場で認めるのは初めて。2024年内の買収完了に向けて、買収に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)との対話を進めていくとした。
今井氏は、日本鉄鋼連盟の会長として定例の記者会見に出席し、記者の質問に応じた。対米外国投資委員会(CFIUS)の審査が延長になり、判断が米大統領選後に持ち越される公算が大きくなっているが、「大統領選挙のなかで本件が取り沙汰されている状況は変わらない」と警戒感を示した。
今井氏は買収成立へのポイントとしてUSWとの対話を挙げた。理由として「大統領選で繰り返し話題になっているのはUSWという85万人を擁する団体を意識してのことだ」と述べた。USスチールが本社を置くペンシルベニア州は大統領選の激戦州となっており、民主、共和両党が組織票を獲得しようとUSWに配慮した発言を繰り返してきた。
今井氏は「日本の各経済団体から懸念の表明という形で多大な支援を頂いた。心強く感謝申し上げる」とも述べた。9月上旬にバイデン大統領が中止命令を出すと欧米メディアが報じ、日米の経済界などからは選挙に絡んで政治問題化していることに懸念の声が上がっていた。その後CFIUSは日鉄が審査を一旦取り下げて再申請することを認めていた。
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