キヤノンは26日、半導体の次世代製造装置を初出荷すると発表した。先端半導体の開発を目指す米国の官民組織に納める。装置は「ナノインプリント」と呼ばれる独自技術を使ってウエハー上に回路パターンを描く。光を使う従来の手法に比べて消費電力やコストを抑えられるのが強みで、普及拡大を狙う。
米テキサス大オースティン校が支援し、テキサス州や米インテルなどの半導体企業が参加するコンソーシアム「テキサス・インスティチュート・フォー・エレクトロニクス」に納める。半導体企業などが、研究開発向けに使用する見通しだ。
装置は半導体の製造プロセスで、ウエハー上に回路パターンを描くのに使う。現在は強い光を使って回路を描く手法が標準だ。キヤノンの装置は、回路パターンを刻み込んだ型を「ハンコ」のように押し当てる原理を採用する。
キヤノンは2014年から同技術の開発を本格化し、23年10月に装置の販売を始めた。発売公表後に出荷するのは今回が初めて。最先端のロジック(演算用)半導体の製造に求められる微細な線幅にも対応する。
従来型の装置は多数のレンズを備える必要があるが、キヤノンの装置は構造がシンプルで先端分野の従来手法に比べ、消費電力を約10分の1に抑えられる。複雑な3次元の回路パターンでも一度の押印で描ける。キオクシア、大日本印刷と協力して開発してきた。
同日、取材に応じたキヤノンの光学機器事業本部の岩本和徳副事業本部長は「3〜5年内に、年十数台の販売を目指す」と話した。
ただ、同手法の本格的な普及には課題も残る。微小な粒子のゴミが付着すると不良品が発生してしまうため、ゴミの除去技術などを高める必要がある。ナノインプリントの手法に対応した素材などを開発する他社との更なる連携も重要になる。
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