事実上の「国有化」状態にあるじもとホールディングス(HD)は、傘下のきらやか銀行に注入されている公的資金200億円の返済を巡り、新たな資本調達を検討する。返済期限を2024年9月末から13年延ばしたが、税引き後利益の積み上げだけでは返済原資を確保するのは難しいと判断した。
金融庁が20日に承認した同HDの経営強化計画に盛り込んだ。同HD大株主でSBIホールディングス傘下のSBI地銀ホールディングスや、きらやか銀が本店を置く山形県の地元企業からの増資などを選択肢に入れる。
同計画はきらやか銀の公的資金200億円について「返済原資となる利益剰余金を毎期の利益で積み上げることは困難」と分析。「新型コロナウイルス特例による公的資金を除いた株主資本により返済することは可能」としつつ、「返済後の自己資本比率状況を鑑み、必要に応じて新たな資本調達についても検討する」と明記した。
きらやか銀は計480億円、同じくじもとHD傘下の仙台銀行は300億円の優先株を国に発行する形で公的資金を受け入れている。
内訳は、きらやか銀が震災特例による200億円のC種優先株(返済期限は37年9月末)、同じく震災特例の100億円のD種優先株(37年12月末)、コロナ特例による180億円のE種優先株(48年9月末)の3種類。仙台銀は震災特例による300億円のB種優先株(36年9月末)だ。
それぞれ期日までに返済するめどを立てるため、じもとHDは経営強化計画で49年3月期までの利益剰余金の見通しも示した。きらやか銀は29年3月期以降、毎期16億円以上の最終利益を出して利益剰余金を積み上げる計画だ。
もっとも、計300億円にのぼるC種・D種優先株の返済を控えた37年3月末時点の利益剰余金は183億円の見込みだ。D種優先株100億円の返済は利益剰余金から捻出できるが、C種優先株200億円の返済原資をどう手当てするかは確定していない。
仮に資本金や資本準備金などから返済に充てる場合、24年3月期の経営指標から単純計算すると、きらやか銀の自己資本比率は38年3月末で6%台まで低下する。そうした状況を総合的に判断し、「新たな資本調達の検討」を経営強化計画に書き込んだ。
ある意味、苦肉の策だと言える。最終黒字が数年続いた段階で、資本増強の具体策を考える見通しだ。一方、E種優先株180億円は48年3月期までに300億円の利益剰余金を積み上げるため、返済は「十分に可能」としている。
じもとHDは26年3月期中にも復配を決め、脱「国有化」をめざす方針を掲げている。現在は国が議決権の63%を握っている。24年3月期に234億円の最終赤字を計上し、優先株に配当できなかったためだ。
同HDは9月27日の臨時株主総会で、会長や社長など役員体制を刷新。返済を13年延期するため、C種優先株についての定款も一部変更する。9月30日に迫っていた返済に時間の猶予を確保し、経営再建は新たな局面にさしかかる。
(今井秀和)
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