新法はスマホOSを独占する米アップルなどが対象だ

政府は26日、巨大IT(情報技術)の独占を是正する新法案を閣議決定した。米アップルや米グーグルを念頭に、スマートフォンのアプリ配信や決済システムで他社の参入を妨害することを禁止する。公正取引委員会が所管する同法を通じて、IT事業者の競争を促す。

「スマホソフトウェア競争促進法」と呼ぶ新法案は、従来の独占禁止法と異なる「事前規制」を初めて取り入れる。公取委が同日中に国会に提出する。同委による新法案の提出はおよそ60年ぶりとなる。会期中に成立すれば、2025年末までに施行する見通しだ。

巨大ITに対してあらかじめ複数の禁止事項を設ける。①アプリストアや決済システムで他社の参入を阻害する②検索サービスで自社のサイトなどを優先的に表示する③基本ソフト(OS)の運営を通じて知った他社のデータを自社アプリで活用するなどの行為を禁じる。

巨大ITはセキュリティー対策の観点から、新たに参入するアプリストアの安全対策状況を監視することは可能だ。

従来の独禁法は問題が起こってから調査するため、執行に時間を要することがあった。新法では公取委が巨大ITに順法状況の定期報告を求める。違反行為が見つかった場合には、公取委が迅速に課徴金納付命令などの行政処分を実施できる。

課徴金は国内の該当違反分野の売上高の20%に設定した。違反を繰り返せば最大で30%となる。公取委の同分野への課徴金は通常6%だった。年間売上高が数十兆円におよぶ巨大ITに対して、少しでも抑止力を高める狙いだ。

消費者にとっては複数のアプリストアが登場することで、多様なアプリを安価にダウンロードできるようになるなどの利便性が期待される。決済システムも複数のサービスから選ぶことが可能になる見込みだ。

公取委を担当する自見英子消費者相は26日、閣議後の記者会見で「スマートフォンの特定ソフトウエアについてセキュリティーの確保を図りつつ、イノベーションを活性化して消費者の選択肢の拡大を実現する」と話した。

新法は欧州連合(EU)が3月から全面適用を始めたデジタル市場法(DMA)を参考にした。DMAも同様にアップルやグーグルなどに対して、事前に禁止事項を定める仕組みをとる。

【関連記事】

  • ・Googleに公取委が初の行政処分 ヤフーの広告制限疑い
  • ・Googleになぜ行政処分? 巨大ITと対峙、公取委の狙いは

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。