12日、労働協約への反対とストライキへの賛成を呼びかけるボーイングの組合員=ロイター

【ヒューストン=花房良祐】航空機大手の米ボーイングの労働組合は12日、執行部が会社と合意した労働協約の賛否を巡る組合投票を開始した。同日夜に大勢が判明する。組合員の間で賃上げ幅が十分でないとしてストライキを主張する強硬な意見が台頭。3分の2以上がストに賛成すれば、13日から2008年以来の大規模ストに突入する。

組合投票の結果は米西部時間の13日未明に判明する見通しだ。ボーイング幹部は組合に賛成を呼びかけるなどして躍起になっている。

投票では①協約への賛否、②ストへの賛否――の2つを問う。過半数が協約に反対しても、3分の2がストに賛成しなければ協約は自動発効する。

新規の労働協約は08年以来の全面改定の交渉となった。8日に労使が合意し、12日の組合投票を経て正式に発効する予定だったが、会社に対する強硬論が台頭した。協約の対象はシアトル郊外の工場群を中心とする組合員で3万人以上となる。

8日の労使交渉では、会社と労組執行部は4年間で25%の賃上げ幅で合意した。会社との交渉を主導した執行部は8日、労使合意を歓迎して組合に賛成を呼びかけたが、そもそも当初40%の賃上げを求めており、一部の組合員から執行部の譲歩に批判が噴出。ここ数日間で現場から強烈な突き上げがあったようだ。

地元紙シアトル・タイムスによると、執行部は「ストになるかもしれない」と弱気になっている。

直近にトップに就任したばかりのボーイングのケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)は12日、組合員への手紙で「ストは会社の再建を危険にさらすうえ、顧客からの信頼に傷を付ける」と呼びかけた。11日にオルトバーグ氏は自らシアトル郊外の工場に足を運んで組合員と話したという。

シアトル郊外の工場では小型機「737MAX」や大型機「777」を生産している。ストになれば、今年1月に発生した機体事故の影響で生産が落ち込む民間機事業への打撃は大きい。中型機「787」は組合のない東部サウスカロライナ州で生産しているため、生産停止にならない。

【関連記事】

  • ・ボーイング、過去最大級25%賃上げで合意 スト回避へ
  • ・ボーイング事故で米当局が公聴会、小型機の設計変更へ
  • ・ボーイング「投資適格」黄信号 4〜6月最終赤字2200億円

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。