申告漏れを指摘されたのは、中部地方の都市ガス大手で名古屋市に本社を置く「東邦ガス」です。

関係者によりますと、金融資産の運用リスクを避けるために行う「デリバティブ」と呼ばれる金融商品の取り引きで生じた利益について、「税法上は認められない会計処理をしている」と名古屋国税局から指摘されました。

「デリバティブ」取引は、一定の条件を満たせば利益を次の年度以降に繰り延べて計上することが認められていますが、税務調査の結果、条件を満たしていない利益を繰り延べて計上し、結果的に所得を少なく申告していたことがわかったということです。

このため名古屋国税局は、2022年3月までの4年間で、およそ200億円の法人税などの申告漏れを指摘し、過少申告加算税などを含め、およそ55億円を追徴課税したということです。

「東邦ガス」はNHKの取材に対し、追加の納付を済ませたとしたうえで、「所得計上時期に関する見解の相違があり、国税不服審判所に不服申し立てをしています」などとコメントしています。

専門家 “デリバティブ取引のニーズ増 細心の注意を”

「デリバティブ」取引は、資産の運用などでリスクを回避するために、大企業を中心に行われるケースが多いということで、専門家は、為替相場や株価の変動など、金融市場の動きが激しさを増す中、改めて各企業が税法上の運用のルールなどをしっかりと確認すべきだと指摘しています。

国税庁の元職員で、税制度や税務行政に詳しい中央大学法科大学院の酒井克彦教授は「為替変動リスクなどが高まっている今日では、リスクを回避するためにデリバティブ取引のニーズが、これまでにも増して高まり、今回と同じような税務当局の指摘が今後、増えていく可能性があると思う。悪質な事案ではないが、取り扱う金額やその影響も大きくなるので、企業側には適正な税務申告に向けた細心の注意が求められていると言える」と話していました。

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