宮下知事㊧に新しい完成目標を説明する増田社長(右手前)

日本原燃の増田尚宏社長は29日、青森県の宮下宗一郎知事を訪れ、9月末までの完成を断念した使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)について、新たな完成目標時期を「2026年度中」と報告した。原子力規制委員会での審査対応や工事、検査などにさらに2年半程度の時間が必要と判断した。延期は1993年の着工以来27回目。

増田氏は宮下知事に対して「(規制委の)審査に時間を要し、新たな目標を26年度内とした」と報告。度重なる延期に対して、宮下知事は「新しい工程を示されても、ただちには信頼できない環境だ」と述べ、新しい完成目標についても「楽観的な原燃独自の見解としか受け止められない」と強調した。

また、宮下知事は、核燃料サイクルに対する信頼にも言及し、原燃の経営陣に対する責任についてもただした。増田氏は「(工場を)仕上げることが私の責任」と応じた。

個別の建屋や機器について「設計及び工事の計画の認可」(設工認)と呼ばれる規制委の審査を受けているが、申請書の不備のほか、建屋や機器の耐震設計に必要な「地盤モデル」の見直しや耐震評価に手間取り、時間がかかっていた。

26日開催の規制委の審査会合で原燃は、耐震評価の説明が2025年11月までかかるとした全体計画を提示。規制委からは「『工程ありき』ではなく、しっかり中身を詰めてほしい」といった指摘はあったものの、スケジュール自体には大きな異論は出なかった。

今後はこの計画に従って審査対応していくが、「完成」と呼べる段階に至るには、審査後に対応が必要な工事、検査、書類の補正といった作業がある。

再処理工場の近くに建設中のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場もこれまでの「24年度上期」の完成目標を延期。同日、新たな完成目標を「27年度中」としたと発表した。

新たな目標が順調に進んでも、当初の完成予定だった97年からは30年近く経過することになる。使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出して再利用するための再処理工場は国の「核燃料サイクル」政策の中核施設。完成の遅れで使用済み核燃料はたまり続け、サイクルは実現しないままだ。

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