住友大阪セメントなどはバイオマス発電所のCO2を育苗に活用する(28日、東京都港区)

住友大阪セメントは28日、バイオマス発電所で排出した二酸化炭素(CO2)を育苗に活用する実証を始めると発表した。ハウス内のCO2濃度を高めて苗木の成長を促す。苗木を育て、将来は発電用の木質チップに転換することを見込む。

同社の栃木工場にあるバイオマス発電所で排出されるCO2を使う。排出されたCO2を浄化後に圧縮し、ハウス内に送り込む。CO2の回収・貯留(CCS)とバイオマス発電を組み合わせた「BECCS(ベックス)」にあたる。

植物はCO2濃度が高い環境で成長速度が上がるとされている。栽培するのは花粉の少ないスギの苗木にする。将来的にはバイオマス発電で使う木質チップなどへの利用を想定する。政府は約30年後にスギ花粉の発生量を半減させる目標を掲げており、需要増が見込まれている。

苗木栽培の自動化技術で豊富な知見をもつオムニア・コンチェルト(東京・港)と手を組んだ。育苗ハウスにはセンサーがなどが備え付けられており、温度やCO2濃度を自動制御することができる。光の照射にはバイオマス発電所でつくった電力を利用して環境負荷が少ない。

記者会見する住友大阪セメント小堺規行常務執行役員(左)とオムニア・コンチェルト社長の藤原慶太社長(28日、東京都港区)

実証は2025年3月頃から本格的に始める予定だ。住友大阪セメントは20年に栃木県と包括連携協定を結び、今回の取り組みもその一環になる。林業の復興や新たな雇用創出も目指す。

28日、東京都内で開いた記者会見で、住友大阪セメントの小堺規行常務執行役員は「脱炭素はひとつの手段でできるものではない」としたうえで「日本にはバイオマス発電所が約1000カ所ある。こうした取り組みがひとつのモデルとしてできあがった場合、積み上がっていけばなかなかの削減になる」と話した。

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