2024年4〜6月期の売上高純利益率をランキングしたところ、上位には為替の円安に伴う運用益や事業再編に伴う資産売却益を計上した企業が相次いだ。独自のブランドや技術をいかし本業の利益を伸ばした企業も目立った。中国景気の減速や、人件費の増加といった要因を補った。
日経500種平均株価採用銘柄の3月期決算企業のうち、金融や変則決算などを除く約330社を集計した。売上高純利益率は純利益を売上高で割って求め、高いほど優れた収益力を示す。事業拡大や新規投資、株主還元の資金を確保しやすい。
上場企業全体では7.2%と前年同期から0.3ポイント上がった。08年以降でみると、新型コロナウイルス禍から急回復した21年4〜6月期に次ぐ過去2番目の高水準だった。
純利益率の首位はコーエーテクモホールディングス(HD)で77%だった。本業のゲーム事業は前年同期の新作ゲームの反動で営業減益だったものの、外貨建ての資産運用に関連した収益が膨らんだ。受取利息(49億円)やデリバティブ評価益(58億円)などを営業外収益に計上し、純利益は29%増えた。純利益率も19ポイントあまり改善した。
投資家が求める資本効率の改善へ、上場企業が事業構造を見直す動きが相次ぐ。こうした取り組みに伴う一時的な利益も、純利益率の向上につながった。2位のリログループは持ち分法適用会社だった日本ハウズイングのMBO(経営陣が参加する買収)に応じ、これによる売却益187億円(国際会計基準)を計上した。5位の三井E&Sは中核事業に経営資源を集中するため、持ち分法適用会社の三井海洋開発の保有株式を一部売却した。
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や工程の自動化といったニーズを取り込み、本業が好調だった企業も上位に入った。統合基幹業務システム(ERP)を手掛けるオービックは、純利益率が58%で3位に入った。
会計を中心に人事や販売などの情報をまとめて管理するシステムを、構築・導入する。製造業や流通、金融など幅広い業種から、DXに関連した需要を確保した。コンサルティングからシステム設計、導入後のサポートまで一貫した体制が強みで、外注も頻繁に活用する同業他社に比べ競争力が高い。
足元では売上高1000億円を超える大手企業を中心に営業を強化する。顧客が広がり案件が大型化したことも、利益を押し上げた。インターネット経由でシステムを使うクラウドを採用する顧客が増え、改修やメンテナンスを担う従業員の生産性が向上した。賃上げなどの影響を吸収し、純利益は14%伸びた。
キーエンスは6位だった。中国経済が冷え込んだり販管費が増加したりするなか、純利益率は38%と前年同期から0.5ポイント減にとどめた。世界で先端技術を組み込んだ工場が増え、工程を自動化するファクトリーオートメーション(FA)機器が堅調だった。直販営業体制をいかし、製造現場のニーズを取り込んだ。純利益は10%増の935億円だった。
8位のサンリオは、誕生から50周年を迎えた主力キャラクター「ハローキティ」の記念グッズの販売や関連イベントなどの収入が拡大した。インバウンド(訪日外国人)需要が旺盛で、テーマパークのサンリオピューロランド(東京都多摩市)の客数や客単価も伸びた。
増えた利益は成長投資や株主還元の原資となる。リログループは日本ハウズイング株の売却益の一部を自社株買いに充てる。8月、発行済み株式総数(自己株式を除く)の2.62%にあたる400万株を上限に最大55億円の自社株買いを決めた。三井E&Sは年間配当を従来予想から6円増の18円に引き上げた。
中国や欧米景気の減速懸念など、世界経済の先行きが見通しにくい。日米の金利差縮小を見込んだ円安修正の動きも、業績の下押し材料になる。純利益率は下期にかけ悪化する可能性がある。
(鎌田旭昇)
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