記者会見に出席した富士通の大塚尚子執行役員(中央)や米パラダイム・ヘルスのケント・トールケCEO(右から2番目)ら(26日、川崎市)

富士通は26日、製薬会社向けに治験計画の策定支援サービスを手掛ける米スタートアップのパラダイム・ヘルスと提携したと発表した。富士通は医療機関向けに患者の診療データを収集・加工するサービスを手掛ける。両社のサービスを連携して臨床試験にかかる時間の短縮とコスト削減につなげる。2030年度に200億円の売上高を目指す。

パラダイム・ヘルスのサービスは米国でエピック・システムズやオラクルなどの医療用ソフトウエア大手と連携しており、既に400の施設で使われている。日本での展開に向け、国内電子カルテシステム大手の富士通と組む。

具体的にはまず、富士通が同社の大規模言語モデル(LLM)を用いて診療データやゲノム(全遺伝子情報)などの臨床データを各種規制に準拠した形式に加工する。パラダイムはその加工データを基に、治験を実施可能な医療機関や患者の分布状況を可視化する。

これにより、製薬会社の治験計画策定業務を効率化できるようになるほか、医療機関も患者が参加できる治験の情報を早期に把握できるようになる。

日本では治験の対象となる患者が複数の病院に分散しているため、治験計画に必要な症例収集に時間とコストがかかる。その結果、新薬開発のために企画される国際共同治験の対象地域から除外されるケースが増加している。

厚生労働省の資料によれば、欧米で承認済みだが日本で未承認の薬143品目のうち、6割にあたる86品目は2023年3月時点で国内で開発に着手すらしていない。医薬産業政策研究所によると、00〜21年に日本が参加した国際共同治験の数は累計で2110で、世界で23位にとどまる。

海外の新薬が日本で使えないドラッグロスの問題が深刻化する中、富士通はパラダイムとの提携で治験業務をデジタル化して国際共同治験の誘致を促進したい考えだ。同日の会見で大塚尚子執行役員は「人手に頼った治療プロセスをデジタル化することで、日本で実施される国際共同治験件数を今の何倍にもする」と述べた。

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