新潟県が24日公表した東京電力ホールディングス(HD)柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の地域経済への影響に関する調査結果について、花角英世知事は同日の記者会見で「再稼働に関する議論の材料としていく」と改めて述べた。経済効果・財政・雇用のいずれも再稼働時が停止時や廃炉時を上回ったが、花角知事は「ある程度想定した通り」と冷静に受け止めた。
調査は野村総合研究所に委託し実施した。「6、7号機の再稼働時」「1〜7号機の廃炉時」「全基稼働停止時」の3パターンを想定し、経済・財政・雇用の3つの観点から分析した。
推計にあたっては原発が安定的に稼働していた05〜07年度、停止していた13〜22年度の支出や雇用のデータなどを活用したほか、廃炉になった米原発の調査報告書も参照した。
1つ目の県内への経済波及効果では東京電力HDによる地元発注額などの直接効果に加え、間接効果も含めて推計した。
再稼働時の県内への経済波及効果は10年間で4396億円、稼働停止時は2984億円、廃炉時は1262億円だった。再稼働時は新規制基準に対応した安全対策工事への投資なども見込まれる。廃炉の場合、海外の事例では本格的な解体作業は数十年以降にピークを迎えるため「安定的な経済効果は見込めない可能性がある」とした。
2つ目の財政面では、原発関連の税・交付金などによる県など地元自治体の収入を比較した。10年間の累計額は再稼働時が3216億円、稼働停止時は2735億円、廃炉時が802億円となった。このうち原発関連税・交付金、固定資産税などの一般税のいずれも再稼働時が最も高かった。
3つ目の県内従業者数の推計では再稼働時が年間で4680人、稼働停止時が2932人、廃炉時が1986人だった。雇用の面でも再稼働時が最も効果が高いことが明らかになった。
花角知事は24日の記者会見で調査の結果について「この数字が多いか少ないかは人によって受け止め方が違う。これからの議論でどう影響していくか見ていく」と慎重な受け答えに終始した。経済・財政・雇用のすべての観点で再稼働時が最も高かったが「経済効果イコール地域社会の活性化ではない。ここは分けて考えないといけない」と指摘した。
柏崎刈羽原発では15日から核燃料を搬入する作業が始まり、再稼働に向けた準備が着実に進んでいる。東電HDは「再稼働は地元の理解が大前提」との立場をとっている。
花角知事は今後、県技術委員会による安全対策の確認、国による災害対策指針の見直しや屋内退避の議論などを踏まえ最終的な是非を判断していく考えだ。ただ、判断の時期については明言していない。
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