全国41社の第三セクターの鉄道会社が加盟する第三セクター鉄道等協議会(東京)がまとめた2023年度決算は、通常の事業活動で発生した損益を示す経常損益が9割の37社で赤字だった。利用客は3年連続で回復したものの新型コロナウイルス禍前に及ばず、燃料費高騰と施設の老朽化に伴う維持管理費の負担が大きい。土砂崩れなどの災害復旧費も重なり、経営の苦境が続く。(共同通信=相沢一朗)
全体の経常赤字額は前年度比39.3%減の86億269万円。輸送実績がある中で最大赤字は、熊本県八代市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ「肥薩おれんじ鉄道」(熊本)の8億7913万円だった。九州新幹線開業に伴い在来線を引き継いで以降、20年続けて赤字だ。
経常黒字額が最も大きかったのは、北陸新幹線開業による経営分離で発足した「あいの風とやま鉄道」(富山)の9793万円。鉄道施設保有会社の「北近畿タンゴ鉄道」(京都)を除く40社の合計輸送人員は延べ8584万人で6.9%伸びた。ただコロナ前の18年度より10.8%少ない。
4路線を運営する「平成筑豊鉄道」(福岡)は、本業のもうけを示す営業損益も27年連続の赤字を計上した。経営が好転する見通しが立たず、7月に地元9市町村に対し地域公共交通活性化再生法に基づき、公共交通の在り方を議論する法定協議会設置を要請した。
同社の試算では、JR九州から引き継いだ3路線を今後30年維持すると、管理コストの高止まりで10億円程度の赤字が毎年発生。2026年度以降は現状の3倍以上の助成金を求めることになる。
河合賢一(かわい・けんいち)社長は「住民の足を確保するため白紙からの話し合いが必要だ」と訴える。バス転換も選択肢となりそうだ。
大雨や台風といった災害の対策費も課題だ。「松浦鉄道」(長崎)の一般修繕費は前年度比18.1%増の3328万円。今里晴樹(いまざと・はるき)社長は「老朽化に加え、災害の大型化や集中化で費用が年々増えている」と語る。
協議会は、全国的な激甚災害の増加で三セク鉄道の経費が膨らんでいるとみる。
大半の三セク鉄道は自治体からの補助金により、運営費を捻出しているのが実態だ。利益の積み上げである繰越利益剰余金がマイナスなのも珍しくない。
2023年度に経常黒字を確保した4社のうち「南阿蘇鉄道」(熊本)は16年の熊本地震の被災から23年7月に全線で再開。自治体が線路や駅舎を保有し、南阿蘇鉄道が運行を担う「上下分離」方式で再スタートを切った。
「三陸鉄道」(岩手)や「若桜鉄道」(鳥取)など他5社も同様の上下分離で運営するが、経常黒字だったのは「信楽高原鉄道」(滋賀)だけ。協議会の高橋正人(たかはし・まさと)事務局長は「負担が軽減されるのは確かだが、経営状況は厳しい」と指摘している。
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