「円キャリートレード」は、金利が低い円を借り、ドルなどの金利が高い通貨に換えて運用し、利ざやを稼ぐヘッジファンドなどの投機筋の取り引きです。
円を売ってドルを買うため、この取り引きが膨らむと円安ドル高が進みやすくなります。
先週末にアメリカで公表された「IMM通貨先物ポジション」によりますと、先物取引で円を売ろうという動きが買いを大きく上回る、いわゆる売り越しの状態が長く続いていて、先月2日、9日には先物取引の単位で18万枚を超える売り越しとなりました。
このころ円相場は1ドル=161円台と歴史的な円安水準でした。
ところが、その後は円の売り越しが急激に縮小し、先月30日は売り越しが7万枚余りと半減、日銀が追加利上げをした直後の今月6日は1万枚余りまで減少しました。
このころの円相場は一時1ドル=141円台まで急騰し、日経平均株価は過去最大となる4451円の下落。
直近の今月13日にはついに円の先物は買い越しとなりました。
あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは、統計に表れている動きは円キャリートレードを急速に解消する動きを反映していると指摘したうえで「めったにないというか、初めて見るスピード感だ。きっかけは日銀の追加の利上げと、アメリカの景気悪化の指標が出たことだが、過大に積み上がっていた円売りポジションが大きく巻き戻されたのではないか」と話しています。
例えば日本の銀行から1万円を借り、円相場が1ドル=160円のときに円を売ってドルに換えれば、およそ62ドルが手元に入ります。
ところが円高が進んで、1ドル=150円になった場合、借りた1万円を返すにはおよそ66ドルが必要になり、負担が増えてしまいます。
今後、日銀がさらなる利上げに動き、日米の金利差の縮小で円高が一段と進む可能性もあると見た投機筋の間で、負担がこれ以上膨らまないよう急いでドルを円に戻す動き、さらに株式などを売却して負担を穴埋めしようという動きが相まって、急ピッチな円高、そして記録的な株価急落につながっていったとみられています。
円相場は20日の午後5時時点で146円台半ばですが、円キャリートレードの今後の見通しについて、諸我さんは「日米の短期金利の差はまだ5%以上あるので、円キャリートレードをするインセンティブがまだ強いと思う。ただ、市場の価格変動が大きい状況が続いているため、円キャリートレードを再構築するのに少し慎重になる投機筋が多いと考えている」と話しています。
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