日本マクドナルドホールディングス(HD)が9日発表した2024年1〜6月期の連結純利益は前年同期比31%増の148億円と同期間で最高益を更新した。1月に値上げしながらも客数を伸ばした。ただ7月の既存店売上高は49カ月ぶりに前年割れとなった。本国の米で格安の「5ドルセット」が人気を博す気がかりな兆候もある。値上げが息切れしかねないという懸念が出てきた。

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連結売上高は10%増の2009億円。営業利益は32%増の237億円と同期間で過去最高となった。1〜6月の既存店売上高は前年同期比7.1%増えた。1月に主力バーガー「ビッグマック」など全体の3分の1の商品で10〜30円値上げし、客単価が3.7%増えたほか客数も3.2%増加した。

事業会社、日本マクドナルドの吉田修子最高財務責任者(CFO)は9日に開いた決算説明会で好調の要因を「諸施策が相乗効果を発揮した」と話した。値上げ後もクーポンや期間限定の値引き施策でお得感を出しながら、春の季節定番商品として3月に販売した「てりたま」や欧州料理をイメージした「ヨーロッパバーガーズ」など期間限定商品で定期的な来店客増につなげた。

オンライン決算会見で説明する日本マクドナルドの吉田修子CFO(9日)

昼食時間帯以外の商品拡充も効果が表れている。同社は23年から「本気カフェ宣言」と銘打ち、ホットコーヒーやカフェラテ、アイスコーヒーの味わいを次々と刷新してきた。コーヒー1杯だけの利用や朝食利用を促し来店頻度を高めているほか、1杯120円からという価格競争力で値上げが続くカフェチェーンなど他業態からも顧客を取り込んだ。

いちよし経済研究所の鮫島誠一郎首席研究員は「日本のマクドナルドは『安かろう悪かろう』のイメージからは一線を画し、幅広い層に使われている。コロナ禍前比で(全店)売上高が4割増えたが、人材の採用やデジタル化など販売増を支える店舗運営も頭一つ抜けている」と指摘する。

気になるのが今後の価格戦略だ。米マクドナルドの主力市場である米国では長引くインフレで低所得世帯の支出減が続き、客足が減少。6月下旬からバーガーとポテトなどのサイドメニュー、ドリンクがついたセットを5ドルで販売する格安セットを始めた。消費者の好評を得ているとして当初4週間としていた販売期間を延長している。

米マクドナルドが始めた「5ドルセット」のポスター(6月、ニューヨーク)

日本でも長引く物価高で消費者の節約志向は強まっており、競合では値下げの動きも出始めた。「ケンタッキーフライドチキン」を展開する日本ケンタッキー・フライド・チキンは5月末からランチセット16種類を40円値下げした。同社では23年10月から7月まで10カ月連続で既存店客数が前年を下回る。

日本マクドナルドもクーポンの配布やナゲットなどを期間限定で値引きするなどお得感の打ち出しに力を入れる。日銀の利上げに伴う足元の円高進行で、ポテトなど輸入品の原材料費の高騰は一服する可能性がある。

人件費や物流費は今後も上昇が見込まれ、日本マクドナルドHDの日色保社長は「さらなる値上げも視野に入れざるを得ない」と強調する。ただ、消費者にこれ以上の値上げが受け入れられるかは不透明で「円高が進めば値上げしにくくなる」(いちよしの鮫島氏)との見方も出ている。

システム障害の再発防止も急務だ。今期はすでに3月と7月の2度、システム障害によって多くの店舗で営業を停止する事態に陥った。7月の障害の際は一時全国約3000店舗のうち3分の1の店舗で営業を休止し、全店での営業再開には1週間かかるなど、利用者の信頼が揺らいだ。

障害の影響が響き、日本マクドナルドHDが6日に発表した7月の既存店売上高は、前年同月比1.6%減と49カ月ぶりに前年同月を下回った。20年7月から続いた連続増収記録にブレーキがかかった格好だ。

値上げは賃上げやデジタル技術など次世代投資の原資にもなる。日色社長は「持続可能なビジネスのために好循環を作らないといけない」と強調する。達成にはシステム障害への対策を急ぎ、インフレ下でちらつく低価格志向の影もかわさなければならない。かじ取りの難度は高い。

(佐藤優衣)

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