記者会見するJR東海の丹羽社長(8日、大阪市)

JR東海の丹羽俊介社長は8日の記者会見で、リニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間、名古屋―大阪間を並行して工事を進めることについて「財務面や工事の遂行能力を踏まえると不可能だ」と述べ、否定的な認識を示した。政府は最短2037年の全線開業へ支援する姿勢を示す。JR東海は従来の工事方針を維持しながら早期実現をめざす考えだ。

同社は当初、品川―名古屋を27年に開業し、経営体力の回復を待ってから名古屋―大阪の工事に着手、45年に全線開業する計画だった。政府が低利で貸し出す3兆円の財政投融資を活用して、JR東海が最大8年前倒しをめざすとした経緯がある。

JR東海は3月、未着工の静岡工区の遅れを踏まえて品川―名古屋間の27年開業を断念。静岡工区の工事は少なくとも10年かかるため、同区間の開業は34年以降になる。これに伴い全線開業の時期も影響を受ける。

政府は6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、最短37年目標を堅持する趣旨を明記した。岸田文雄首相は7月31日、三重県亀山市のリニア駅候補地の調査現場を視察し、JR東海を支援する意向を示した。

JR東海は当初の計画で名古屋―大阪の工事は10年かかると見積もっており、仮に37年に開業するには名古屋以東と並行して工事をする必要が生じる。丹羽氏は8日「品川―名古屋の工事に全力を尽くすことが大阪までの開業につながると考えている」との認識を改めて強調した。

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