東京地下鉄本社(東京都台東区)

東京地下鉄(東京メトロ)は8日、足立労働基準監督署(労基署)から従業員の労働時間の是正や割増賃金の支払いなどの勧告を受けたと発表した。日比谷線の保守管理にあたる従業員の休憩時間が勤務時間と認定された。他の路線の同様の勤務形態も含めると、未払い賃金は最大で86億円になると見積もっている。

是正勧告は2日付。日比谷線では鉄道設備の保守などをする従業員約30人が月に7回ほど、24時間拘束される全泊勤務をし、休憩と睡眠時間で8時間50分が充てられている。そのうち7時間50分について労基署は「労働から完全に解放されておらず労働時間に該当する」と指摘した。労基署は社員からの申告で1月ごろから調査していた。

同社は突発的な事案で休憩時間に稼働した場合はその都度、稼働分の賃金を支払っていた。労基署は勤務実態から休憩時間にはあたらないと判断し、未払いの割増賃金の支払いと労働時間の是正を求めた。

同線では信号設備や防犯カメラなどの突発的な不具合により、月に平均2.3回は休憩時間中も勤務にあたっていたという。防犯カメラの設置台数が増えたことで対応するケースが多くなっていた。

他路線の保守業務のほか、土木系の職場などグループ全体で約1800人が全泊勤務をしている。全泊勤務の始業時間をずらしたり、拘束時間を減らしたりするなどの対策をとるという。同社の中川恵介労務課長は「是正勧告を厳粛に受け止めている。類似の他の職場においても対応を進め、勤務を見直す」と話した。

未払いの残業代は労働組合と協議して金額を決める。支払額は最大約86億円を見込み、2024年10〜12月期以降に特別損失として費用を計上する。

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