伊藤氏は大規模言語モデルにはまだ改善の余地が大きいと話した(2日午前、東京都千代田区)

米グーグル出身の著名研究者らが日本で立ち上げた人工知能(AI)開発の新興企業、Sakana(サカナ)AI(東京・港)の伊藤錬最高執行責任者(COO)は2日、「GDS2024世界デジタルサミット」(日本経済新聞社主催)で講演した。AIの開発では常に時流の一歩先を目指していると強調した。

伊藤氏が講演のテーマとしたのはAI開発のトレンドだ。2022年以降に登場した米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」など多くの大規模言語モデル(LLM)の開発には規模の法則が働いているとした。大量のデータ投入や計算を行うには膨大な資金や時間がかかってしまう現状を指摘した。

メルカリ元幹部の伊藤氏ら3人の創業者は「なにか変わったことをやってみよう」という動機で23年にサカナAIを設立したという。技術開発においてはトレンドにとらわれず「今あるスタンダードの半歩、一歩先を常に考えている」と話した。

これまでの具体的な成果として、自由に改変できるオープンソースの既存LLMを組み合わせて高性能のLLMを生み出す画期的な手法を紹介した。24ドル(約3600円)の費用と24時間という短時間でオープンAIのLLMに匹敵する性能を実現できたという。伊藤氏は「持続可能なAIをつくることが今後のトレンドだと思っている」と話した。

生成AIブームが盛り上がる一方で、企業における有力なユースケース(活用事例)が見つかっていない要因は「アプリケーションの問題ではなく、LLM自体にまだ発展の余地がある」との見方を示した。企業が保有するデータを活用するために、各社が固有のLLMを開発する必要性も指摘した。

日本におけるAIの活用には「Secure(安全性)」「Special(特別感)」「Sustainable(持続可能性)」が必要であるとした。「プライバシー面などで安心してもらえるようなAIをつくり、電力消費も抑える必要がある」と話した。

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