――愛人問題で会社を追われる男性経営者が後を絶ちません。
「一般的に男性は経営者を目指して懸命に働いており、無意識のうちにより多くの女性と情事を重ねることをその目的としています。経営者になることは手段にすぎず、女性との情事こそが本来の無意識的な目的だと私は考えます」
「経営者になれば、女性を引きつける上で有利となる富と権力が手に入ります。女性スキャンダルを起こす男性経営者は、本来の目的を達成しているだけだともいえます」
――なぜ男性は富と権力で女性を引きつけることができるのでしょうか。
「教育の機会や食料を提供するなど、子どもの養育に必要な投資の能力が高いことを女性に示せるからです。このようにヒトの場合、母親ほどではないにしろ、父親も子どもの養育に参画しています。夫婦で子育てする種は珍しく、ヒト以外には鳥類やゴリラなどしか存在しません。それ以外のほとんどの種は母親だけで子どもを育てるので、母親は父親の持つ富や権力には関心がありません。繁殖相手を選ぶ上で関心があるのは、父親の持つ遺伝的な質だけです」
「一方、ヒトの場合、父親も子どもの養育に加わるので、母親は富と権力を持つ男性との繁殖を好むことになります」
人類の歴史を通じて行われてきたセクハラ
――近年、愛人問題のみならず、女性へのセクハラでも多くの経営者が失脚しています。男性経営者がセクハラ行為に走るのは、女性を魅力できるほどの富と権力を得たと思い込んでいるからなのでしょうか。
「その通りです。男性は繁殖相手である女性に様々な方法でアプローチします。その一つがセクハラなのです。セクハラは人類の歴史を通じてずっと行われてきました。ただ四半世紀前から社会規範が変わり、セクハラの加害者が制裁を受けるようになりました」
――どうしたら男性経営者が妻以外の女性にアプローチするのを防ぐことができるのでしょうか。
「より多くの女性との情事を重ねることが、経営者になった本来の目的なので、防ぐのは非常に難しいでしょう。一生懸命働いて経営者になった男性に対して『不倫してはならない』と説くことは、一生懸命働いてお金を稼いだ人に、『お金を使うな』と言っているようなものです」
「またビジネスで大きなリスクを取って成功した者が経営者になっています。経済学や人格心理学の言葉を借りれば、『リスク愛好型』の人間だと言えます。そうした人は女性スキャンダルに発展するリスクを低く見積もりがちです」
「さらに愛人問題で経営者が失脚する確率は小さいのが現実です。『女性スキャンダルに発展する恐れがあるから不倫するな』と主張することは、『墜落事故のリスクがあるから、飛行機には乗るな』と言っているのと同じです」
「ほとんどの人は飛行機に乗っても、無事でいられるように、愛人がいる経営者のほとんどが、無事に過ごせています。リスクを取ってでも愛人をつくることは合理的な判断だとも言えるのです」
(日経ビジネス 吉野次郎)
[日経ビジネス電子版 2024年4月30日の記事を再構成]
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