脱炭素で連携する福岡県の服部誠太郎知事(左から3人目)とドーガンの森大介社長(同4人目)ら(30日、福岡市博多区)

投資ファンドのドーガン(福岡市)は30日、九州の脱炭素にまつわる事業に投融資するファンドを立ち上げたと発表した。ファンドの規模は10億円超で、存続期間は10年。福岡県もドーガンと連携協定を結び、投資先紹介などで支援する。九州に集積する自動車産業の電気自動車(EV)シフトなどを促す狙いがある。

「MGXファンド」を23日付で設立した。MGXは「モビリティー・グリーントランスフォーメーション(GX)」の略称で、九州の主要産業である自動車などモビリティー産業の脱炭素を支援することを主な役割の一つとする。

投資先は幅広く想定しており、脱炭素に関する事業に取り組む企業であれば投資対象として検討する。九州以外を本拠地とする企業にも投資したい考えだ。先進技術を持つスタートアップのほか、中堅・中小企業の新規開発や事業転換などもファンドを通じて支える。

ファンドには第一交通産業や正興電機製作所など地場企業のほか、福岡銀行、西日本シティ銀行、北九州銀行の3行も出資者として参加する。2025年6月末までは出資者を募り、ファンド規模を広げることも視野に入れる。

投資方法としては株式取得だけでなく劣後ローンや社債も用意した。ドーガンの担当者は「スタートアップ投資で多い株式での出資だけでなく、融資で資金調達したい老舗企業のニーズにも対応した」と説明する。

福岡県はファンドで投資できそうな企業の情報を提供したり、実証実験に協力できる市町村を紹介したりすることで連携する。30日に開いた福岡県とドーガンの連携協定締結式で、服部誠太郎知事は「福岡県の自動車産業が『先進モビリティー産業』へ発展するよう、協定を一つの契機として生かしたい」と話した。

福岡県内には高級車「レクサス」の一大製造拠点を抱えるトヨタ自動車九州(福岡県宮若市)を筆頭に自動車産業が集積している。大手メーカーがガソリン車からEVを含む電動車への移行が進むことを想定するなか、ファンドを通じて県内に集積するサプライチェーン(供給網)企業の電動化対応も支援する。

第一交通はタクシー業界でも電動車が将来普及することを見据えて、ファンドを通じて様々な脱炭素関連企業と接触したい考えだ。田中亮一郎社長は車を使う側の企業がファンドに参加する珍しさに触れ「出口の企業として(投資先の技術などの)使いやすさを研究してデータを出したい」と語った。

ドーガンの森大介社長は今後について「存続期間の10年で終わりではなく第2号ファンドを作るなど、色々な広がりをみせることが大事だ」と話す。海外企業も含めた様々な投資先と、脱炭素関連技術の実証実験に取り組むことも目指す。

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