政府は29日、2025年度当初予算の概算要求基準を臨時閣議で了解した。物価高対策などは、必要な金額を示さずに予算を求める「事項要求」を例外的に認めた。岸田政権が重視する「構造的賃上げ」などの項目は特別枠として手厚く要求することを認めたが、看板政策の名のもとに各省庁から要求額が膨らむ懸念がある。

◆「特別枠」は4.2兆円

 概算要求基準は、各省庁が財務省に来年度の予算を要求する際のルール。少子化対策や防衛力強化など政権が実現を目指す「特別枠」の規模は4兆2000億円。各省庁が自由に使える裁量的経費を前年度比で1割削減すれば、削減額の3倍を特別枠として要求できる。

臨時閣議に臨む鈴木財務相=29日、首相官邸で(佐藤哲紀撮影)

 事項要求は、8月末時点で事業の予算の見通しが付かない場合、金額を示さず項目だけを挙げる仕組み。新型コロナウイルス禍以降の予算編成では事項要求が急増し、実質的に青天井の要求となって要求総額が膨張する一因となっている。

◆財務相は膨張の可能性否定

 これに対し、鈴木俊一財務相はこの日の会見で、「各省と財務省の議論で決定される」と述べ、事項要求の増加が予算膨張につながる可能性を否定した。  予算で最大の支出分野となる社会保障費は、高齢化による自然増を4100億円と見込む。後期高齢者人口の増加が鈍化し、2024年度要求時点の5200億円から減少した。(市川千晴) 

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