無人の自動運転バスを、トンネルがある山間部でもスムーズに走らせる。北海道上士幌町で実証実験が行われた。通信環境が悪くなるトンネル内に電波を送り、バスの遠隔管理システムの安定性を検証した。
町は、人口減少社会を見据え、新しい地域公共交通を確保するため、2017年度から自動運転バスの実証実験を重ねている。2年前から、中心部で自動運転バスの定期運行を開始。今年度中には、一定の制限下で運転手が同乗しなくても運行できる自動運転「レベル4」を実施する予定だ。
将来的には、町中心部から約20キロ離れた山間にある観光地「ぬかびら源泉郷」への運行も予定している。総務省の事業を活用し、同町の自動運転バスの運行に関わっているソフトバンク子会社の「ボードリー」(東京)と大手携帯通信会社のソフトバンク、町が協力して実施する。
自動運転バスは、あらかじめ作成した3Dマップや車載センサーでトンネル内でも支障なく運行できる。だが、完全無人化では、車内映像や通信を通して、遠隔監視センターとやりとりできることが必須だ。
試験は、7月8日~19日の期間、ぬかびら源泉郷近くの国道273号の「糠平トンネル」(464メートル)と不二川トンネル(482メートル)付近の約1キロで実施。電波状況の悪いトンネルの出口付近にソフトバンクの移動基地局車を配置し、電波を送る。
基地局車の配置や電波の強さなど様々なケースを検証し、トンネル内で効率的に通信を維持するシステム構築を目指す。使用する車両は、比較的速度の出る日本のティアフォー社製のEVバス(定員12人)を使用。最高速度は約35キロ。運転手が同乗し、危険回避などの操作をする自動運転「レベル2」で行う。
上士幌町の竹中貢町長は「自動運転バスが、山間部のトンネルもスムーズに運行できるように、全国に先駆けて行う実験。ここで得た知見は同じような地域に生かされると思う。一つずつ課題を乗り越えて、(完全無人の自動運転が可能な)レベル4に到達したい」と述べた。(中沢滋人)
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