兵庫県の淡路島で江戸時代から続く瓦の生産技術を生かしたオカリナ制作プロジェクトが進んでいる。島の瓦はいぶし銀のような光沢が特徴。愛知、島根両県産と並び「日本三大瓦」と称される。主宰する南あわじ市の友地裕(ともち・ひろし)さん(42)は「瓦のように数百年先まで残る文化に育てたい」と夢を描く。(共同通信=伊藤美優)
淡路瓦も友地さんの作る「吟オカリナ」も、島で採れた良質な土を原料とし焼き上げて完成させる。吟オカリナは軽量で丸洗いできるほか、プロジェクトの仲間が手がけるオカリナは初心者用に穴の数を減らすなどユニークさが際立つ。価格帯は5千円台から4万円超まで。オンラインや楽器店を通じて注文を受けて生産する。
友地さんは高校卒業後に淡路島を離れた。東京などで料理人や書芸家として経験を積み、2007年にUターン。帰郷前に友人の勧めでオカリナを吹くようになっていた。瓦作りが盛んな島で、同じ土からオカリナを生み出すアイデアが浮かび「吟友工房」を開いた。
瓦工場で除外された土を買い取り、粘土に再生。自身の工房でオカリナとして成形し、乾燥させる。再び瓦工場に持ち込み、瓦と一緒に焼き上げてもらう。納品まで1年以上待つほどの人気だ。
300年先にオカリナの文化を残すことが目標だが、一人でどれだけ作っても根付かせるのは難しい。自らの技術を広めて島のオカリナ職人を増やす活動も始めた。製品がふるさと納税の返礼品に採用されるなど、地域貢献の一翼も担う。「歴史や文化をつくっていくという意思を持ち、みんなでやっていくことが重要だ」と語る。
大人も子供も一緒に合奏できるのがオカリナの長所。瓦職人の中には、瓦作りへのこだわりが強く、渋い顔をする人もいるというが「職人さんは粘土の特性を一番知っている。知名度が上がり、子供たちも吹くようになれば、理解してくれるかもしれない」。島の子供全員がオカリナを持ち、学校教育にも取り入れてもらうことを目標とし、普及に努める。
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