日本百貨店協会(東京・中央)が25日発表した2024年1〜6月の売上高によると、大阪(10店舗)が前年同期比23%増となった。増収率は東京(22店舗、13%)を上回った。インバウンド(訪日外国人)需要に加え、円安・ドル高で海外旅行を控えた国内客の消費を他の地域に先駆けて取り込んだことが奏功した。
1〜6月の1店舗あたりの売上高も487億円と、東京(388億円)を超え主要10都市圏で最高だった。
大阪の百貨店は複数路線の乗換駅や終着駅に直結したターミナルデパートが中心で、外国人客にとっても旅行のついでに立ち寄りやすい。円安・ドル高局面で外国人客の購買意欲が高まったことの恩恵を、他地域よりも比較的多く受けた格好だ。
同時に国内客向けも伸びている。近鉄百貨店によると「日本では円安や海外の物価高を理由に海外旅行を控える人が増えている。『安近短』の消費志向が高まっている」。
あべのハルカス近鉄本店(大阪市)では6月、国内客の取り込みも視野に人気アニメ「ポケットモンスター」の大型イベントを開催。「国内のファミリー層を広く取り込むことができた」という。
大阪以外の関西の都市圏も好調だ。1〜6月の売上高については京都(5店舗)が前年同期比19%増、神戸(4店舗)も13%増となった。
足元でも消費に衰えは見られない。6月単月の売上高は大阪が前年同月比22%増の856億円。5カ月連続で20%を上回る増収を維持した。
エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の阪急阪神百貨店の阪急うめだ本店(大阪市、メンズ館含む)の6月の売上高は前年同月比38%増だった。
インバウンド需要も好調だが、序盤だった夏商戦にも手応えがあったようだ。男性向け雑貨などを取り扱う「メンズ館」でもスキンケア用品や日傘、サングラスが売れた。女性だけではなく男性向けの猛暑関連の需要も業績を後押ししている。
ただ今後については不透明感も強まってきている。インバウンド需要については円高・ドル安基調に転じつつある為替動向が影響する可能性が高い。「円安に寄与するところが大きく、(インバウンド消費の伸びが)いつまでも続くという保証はない」(近鉄百貨店の梶間隆弘社長)
国内客のさらなる取り込みが急務となっている。近鉄百貨店では知名度の高い食品スーパーやドラッグストアなどのフランチャイズチェーン(FC)加盟店として自社運営する売り場を増やしている。例えば高級スーパー「成城石井」の導入店舗の拡大もその一環だ。
地域住民にとってはなじみ深い百貨店だが、売り場の鮮度を上げて求心力をどれだけ高めることができるか。「インバウンド後」をにらんだ店づくりのあり方を模索する動きが広がりそうだ。
(安藤健太)
【関連記事】
- ・6月の百貨店売上高14%増 免税も2.4倍で過去2番目
- ・近鉄百貨店の純利益22%増 25年2月期、訪日客伸びる
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。