サカナAIは高性能かつ低コストの生成AIモデルの開発を進めている

日本経済新聞社が出資する投資家向けサービスのケップル(東京・港)の調査によると、国内スタートアップの6月の資金調達額(借り入れを含む。公表資料ベース)は前年同月比49%増の698億円だった。200億円規模の大型案件もみられ、調達額は直近6カ月間で最高となった。

調達件数は10%減の137件と、5カ月ぶりに前年同月を下回った。調達力を備えたスタートアップに大型資金が絞り込まれる傾向が強まっている。上位3社の調達額はそれぞれ50億円を超え、全体を押し上げた。

首位は生成AI(人工知能)などを開発するサカナAI(東京・港)だった。米有力ベンチャーキャピタル(VC)のニュー・エンタープライズ・アソシエイツ(NEA)などから1億2500万ドル(約200億円)を調達する。

米グーグル出身のAI研究者らが日本で設立したスタートアップで、小規模なAIを組み合わせて高性能で低コストの生成AIモデルの開発を進めている。今回の調達で企業価値は11億ドルを超え、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)となる見通しだ。

2位には自動運転ソフトを開発するティアフォー(名古屋市)が入った。いすゞ自動車やスズキなどが出資した。特定の条件下で全ての操作を任せる自動運転「レベル4」に対応した車両の開発体制を強化する。

宇宙関連企業の大型調達も目立った。3位は地球の地表の状態を観測する小型衛星を開発するSynspective(シンスペクティブ、東京・江東)だった。打ち上げなどに向けた事業基盤の拡充に向け、VCなどから70億円を調達した。5位には水を推進剤にする小型衛星用推進機「水エンジン」を開発する東京大学発のPale Blue(ペールブルー、千葉県柏市)が入った。

縮小傾向が続いていた調達市況は株式市場の活況で底打ちの気配も見られる。24年1〜6月の調達総額は3007億円と前年同期に比べ5%減った。調達件数は915件と同2%増えた。業界では「投資ファンドの待機資金も十分にあり、新産業に資金が集まる流れが広がる」(国内VCキャピタリスト)との見方もある。

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