急騰 ビットコイン
暗号資産の大手交換会社・ビットフライヤーによると、1ビットコインあたりの円建ての価格は今月8日に1099万円まで上昇し、史上最高値をつけた。
去年末に600万円程度だった価格は、4か月足らずで実に60%以上の急騰となり、市場は異様な熱気に包まれている。(4/19午後3時時点=959万4590円を参照。去年12/31終値=597万8735円)
暗号資産もETFに
2009年ごろに誕生し、急騰と暴落を繰り返してきたビットコイン。
今回の急騰の背景には何があるのか。
最大の要因として複数の市場関係者が挙げるのが、アメリカでの動きである。
アメリカの証券取引委員会はことし1月10日、現物のビットコインに連動するETF=上場投資信託の上場申請を初めて承認。
これにより、暗号資産の交換所に口座がなくても証券口座を通じて、株式や金、不動産などのETFと同じように、間接的にビットコインに投資できるようになった。
その結果、投資家層が拡大して資金流入が加速したというのだ。
その上で、マネックス証券の松嶋真倫・暗号資産アナリストは、ETFを通じたビットコインへの資金流入の動きが、アメリカ以外にも広がりつつあり、市場動向に影響を及ぼしている可能性があると分析する。
マネックス証券 松嶋真倫 暗号資産アナリスト
「アメリカに続き、香港でもビットコインなどを運用対象にする現物ETFの上場が初めて承認されたほか、イギリスも上場申請の受け付けを始めると発表した。金融市場の資金が暗号資産市場へ本格的に流れるための環境ができつつあり、機関投資家や一般の個人投資家など、投資家層が一段と広がる可能性がある」
4年に1度の大イベント「半減期」って?
さらにもう1つ、取引価格の上昇に影響していると指摘するのが「半減期」と呼ばれる、ビットコインの重要イベントだ。
ビットコインは、取り引きデータの安全性を確保するために暗号化され、世界中のネットワークに分散して管理されている。
その際、膨大な取り引きデータを計算処理する必要があり、この処理をいち早く行った事業者には、新たに発行される暗号資産が報酬として与えられる。
その報酬が半分になるタイミングが「半減期」だ。
ビットコインは、希少性を維持する観点から、創設者により総発行枚数が2100万枚に制限されていて、半減期は、発行枚数の上限を超えないよう段階的にやってくる。
過去3回、ほぼ4年ごとに半減期を迎え、その4回目が、今月20日にも訪れると予想されている。
『業界のオリンピック』で何が起きる?
暗号資産の世界で「業界のオリンピック」と表現されることもある、ビットコインの半減期。
そこに市場の注目が集まるのは「報酬の半減により、ビットコインの新規発行量が減少し、需給が引き締まることで、価格が上がる」という期待感があるためだ。
年明け以降の値動きは、過去3回の半減期の後、実際にビットコインの価格が大幅に上昇したことを踏まえた、期待先行の面も大きい。
過去の半減期の時期
1回目 2012年11月28日 900円→12万円(約1年後)
2回目 2016年7月9日 6万円→230万円(約1年半後)
3回目 2020年5月11日 85万円→660万円(約1年後)
ビットコイン市場 今後のリスクは?
ただ、4回目の半減期を迎える今回が、過去3回と大きく異なるのは、半減期を迎える前に、史上最高値を更新しているという点である。
SBI VCトレードの西山祥史アナリストは、「半減期を前にビットコインの需給がすでにひっ迫している特異なケースだ」としたうえで、今後の市場動向をこう分析する。
1 アメリカの利下げが、市場の想定通り行われるか
2 株式市場の「適温相場」の持続=投資家がリスクを取る姿勢を強めるか
3 アメリカのインフレ率と長期金利が低下するか
「この3つの条件がそろえば、ビットコイン価格はさらに上昇する余地がある。逆に、アメリカでインフレが長引き、金融引き締めが長期化して早期利下げへの期待が弱まれば、リスクシナリオとなり、価格が大きく下落することもありえる」
ビットコインをめぐっては、アメリカの証券当局も、ETFの承認にあたり声明文で、投機的で価格変動の大きな資産であり「ビットコイン自体を承認、推奨したわけではない。投資家はビットコインや、暗号資産と価値が結びついた商品の無数のリスクに引き続き注意する必要がある」と強く釘を刺している。
足もとでは、中東情勢の一段の緊迫化に加え、市場予想を上回るアメリカの経済指標が相次ぐ中で、インフレ長期化の観測が高まりを見せている。
暗号資産は歴史的に乱高下を繰り返してきただけに、今後の動向を冷静に見ていく必要がありそうだ。
注目予定
来週は日銀が金融政策を決める会合を開きます。
日銀は前回・3月の会合でマイナス金利政策の解除などを決めましたが、その後、市場では記録的な円安が進んでいるほか、アメリカのインフレの長期化の観測が広がっています。
こうした状況も踏まえて、植田総裁が今後の対応についてどのような見解を示すかに投資家が注目しています。
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