商品開発を担当した三田友里恵さんは「自分が欲しくなるような商品を開発した」と話す

永谷園のパスタソース「パキット」の売れ行きが順調だ。袋の中に乾麺と水を入れ、電子レンジで加熱して食べる商品で、「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する幅広い消費者の需要を捉えた。2024年3月期は計画の1.3倍にあたる360万食を出荷。23年3月の発売当初は3種類だった商品は5種類に増え、24年8月には新味を発売。今後は「ながら食べ」の需要を開拓する。

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パキットはその名の通りパキッと2つに折ったパスタと水を袋の中に入れ、電子レンジで5〜7分加熱して調理する。加熱後に数分蒸らしてから袋の中身を混ぜれば料理が完成。加えた水がゆで汁となり、ソースと混ざることで乳化する。とろみのあるソースとパスタがよく絡むという。

鍋が不要なうえ、取り皿も用意せず袋のまま食べることができ、調理時間だけでなく、洗い物の手間も省ける手軽さが売りだ。23年3月は「ボロネーゼ」など3種類を発売したが、その後、同年9月に「たらこ」、24年3月には「ジェノベーゼ」を追加した。希望小売価格は324円。

「一食分の準備をする時に手間をかけると、集中力が切れたり疲れたりしてしまう。火を使わずに簡単においしいパスタが作れる商品を考えた」。商品の開発を担当したマーケティング本部の三田友理恵マーチャンダイザーはこう話す。

レンジで加熱するパスタソースの人気が高まっているなか、「麺もパスタソースの中でゆでられるのではないか」と考えたことがきっかけで思いついたのが、パスタを折って袋ごと調理する方法だ。

ただ、社内からは「食品メーカーがパスタを折ることを推奨していいのか」といった反対意見もあがった。三田さんは「小さい子どもがいる家庭では、折ることで食べやすくするのは当たり前で、消費者にも受け入れられる」と説得した。

結果、肩肘を張らずに調理の楽しさが伝わるキャッチーな商品名につながったことも人気商品となった要因だと分析する。

開発には2年かかった。パスタが加熱の過程で焦げてしまったり、ソースが吹きこぼれたりしたほか、電子レンジもメーカーによって機能や加熱する力が異なり、出来上がりにばらつきが出てしまった。

課題に直面する度に製品の研究・開発を担う技術開発センター(東京・大田)に赴き対処した。吹きこぼれを防ぐためにソースの味ごとに加熱の時間を変えたほか、焦げ付きやパスタが硬くなってしまうことを防ぐためにソースの配合も調整した。

均一の出来上がりにするための最大のポイントは加熱後に設定した蒸らし時間だ。電子レンジごとの加熱力の差が出ないギリギリまで温めた後に、パスタを蒸らす工程を加えたことで均一に熱が伝わるように。麺は硬すぎず、ソースの液体も残りすぎない出来上がりを実現できた。

一般的にパスタソースは家族層の購入が多い。パキットも発売当初は子育て世帯のプチぜいたく品としての売り上げを見込んでいた。ただ、「発売したら家族層だけでなく、40代以上の単身世帯の購入が非常に多かった。他にも小腹がすいた子どもが間食用に自分で作っていることもわかった」(三田さん)。想定を超えて幅広い世代が購入し、24年3月期は計画より3割多い360万食の出荷につながった。4〜5月は計約40万食を出荷した。

売り上げ拡大を狙うため「今後はeスポーツや動画配信サイトと組んで、ながら食べの需要を狙う」(三田さん)。8月26日にはボンゴレビアンコ味を発売する。アサリのむき身が15個ほど入っており、「食べ応え満点」(同)だ。「今後はお茶づけと並ぶ永谷園の主力商品にしていきたい」と意気込む。

(西頭宣明)

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