日銀は3日、約20年ぶりとなる新しい紙幣の発行を始めた。1万円札と5000円札、1000円札の3種類の図柄が変更。このうち、1万円札の肖像は1984年から2代にわたって使用された福沢諭吉から、日本経済の礎を築いた渋沢栄一へ40年ぶりの交代となった。日銀はきょう1兆6000億円を民間の金融機関に引き渡し、世の中に行き渡る。

新しく発行される紙幣=名古屋市中区の日本銀行名古屋支店で

 発行に当たり、日銀の植田和男総裁は3日朝、日銀本店で「キャッシュレス化が進んでいるが、現金は誰でも、いつでも、どこでも安心して使える決済手段で今後とも大きな役割を果たしていく」とあいさつした。午前8時すぎ、金沢敏郎発券局長が発行開始の指示を出した。その後、40億円分が束ねられた新1万円札などが、金融機関の委託を受けた警備会社の輸送車に次々と運び込まれた。  新紙幣の「顔」は渋沢栄一のほか、5000円札は樋口一葉から津田塾大を創設した津田梅子に、1000円札は野口英世から「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎に変わった。裏面は1万円札が東京駅丸の内駅舎、5000円札は藤の花、1000円札は葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」が描かれた。  このほか、数字の額面表示を大型化するなど誰もが使いやすいユニバーサルデザインを取り入れた。偽造防止では、肖像の画像が回転して見える「3Dホログラム技術」を世界で初めて採用した。  新紙幣への両替は一部の銀行店舗が3日から始めるが、メガバンクを中心に大半の金融機関が4日以降になる。旧紙幣も引き続き使えるため、「使えなくなる」などと言う詐欺に注意が必要だ。 (山田晃史)

日本銀行券 日本の中央銀行である日銀が発行するお札。お札の肖像や様式は財務省が担当し、独立行政法人の国立印刷局(東京都港区)が印刷して日銀に納入。日銀が発行して民間の金融機関に引き渡す。


  

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