マリノCEOは鉄道車両のIT導入に手応えを語った(19日、東京・千代田)

日立製作所の鉄道ビジネスユニット最高経営責任者(CEO)、ジュゼッペ・マリノ氏は19日、「今後の成長のために適切な柱、事業基盤がすべてそろった」と語った。仏電子機器大手タレスの鉄道信号事業の買収完了で売上収益は1兆円を超え、事業取得による収益拡大に自信を示した。

タレスの事業買収が5月31日に完了したことを受けてマリノ氏が都内で記者会見を開いた。日立は2021年に16億6000万ユーロ(約2800億円)でタレス事業を買収すると発表した。当初は23年3月期中の買収完了を想定していたが、欧州連合(EU)競争法当局の承認が得られずにフランスやドイツでの重複事業の一部を売却するなど対応を迫られた経緯がある。

日立はタレスの事業買収によって47カ国に広がる拠点、9000人の従業員を獲得した。マリノ氏は「地理的なカバーエリアも拡大し、勝者になるための開発・設計体制は2倍になった」とし、鉄道の情報システムの事業拡大に注力する考えを示した。

タレスの信号通信事業の売上収益は約18億ユーロ。日立の既存事業と合わせて25年3月期に鉄道部門の売上収益は初めて1兆円を超える。さらに鉄道車両と制御システムの比率が買収によって60対40から43対57となり、同部門の売上収益EBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)率は10%を上回るという。

日立のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業「ルマーダ」については「製品設計や製造、運用、保守などすべての場面においてデジタルとビッグデータ、生成AI(人工知能)を活用することで最適なソリューションを提供できる」と語った。

鉄道市場は中国国有の中国中車(CRRC)、仏アルストム、独シーメンスの3強メーカーを日立が追う構図となっている。日立は鉄道運行システムや人流解析、料金収受システムなどで欧米アジアの各地域で顧客を抱えるタレス事業を取得して事業拡大に弾みをつける。

マリノ氏は日立が15年に買収したイタリアの鉄道車両会社アンサルドブレダ社の出身。23年4月から日立の鉄道部門CEOを務めている。

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