「Google for Japan」で発言するグーグルのプラバッカー・ラガバン上級副社長(19日、東京都渋谷区)

グーグルが人工知能(AI)を活用した日本独自のサービスを広げている。19日に東京都内で開催したイベントでは、#(ハッシュタグ)をつけた最新トレンドの検索、5分単位の降水量予測を発表した。雇用など地方の課題解決にも乗り出す。矢継ぎ早にサービスを打ち出す背景には、巨大テック企業に対する独占批判があるなか、風当たりを弱める思惑もありそうだ。

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「2024年は生成AIが単に驚きの技術というだけにとどまらず、社会実装されるフェーズに入った。日本は最も重要なマーケットと位置づけている」。グーグル日本法人の奥山真司代表は、この日のイベント「Google for Japan」で強調した。

日本独自の新サービスの一つがハッシュタグでの検索だ。グーグル検索でキーワードの前にハッシュタグをつけると、通常の結果とは異なり、SNSやユーチューブなどのコンテンツを上位に表示する。

日本ではハッシュタグは「#写真好きな人とつながりたい」といったように自己表現の手段としても使われる。興味関心を深掘りする検索結果に一定のニーズがあるとみた。

グーグル検索で「#」をつけると、SNSなどの情報が上位に表示される

AIを活用すれば天気予報もより高精度になる。ウェザーニューズと提携し、過去の気象観測データを直接AIが分析。7月から、グーグルでの降水量予測は現在の1時間単位から5分単位になる。ここ数年急増している突然のゲリラ豪雨など天候の急変に備えやすくなる。

グーグルの岩村水樹バイスプレジデントは「日本の消費者は新たなテクノロジーの導入に好意的だ」と話す。需要が高まる一方、「専門人材はまだまだ不足している」と課題を指摘した。

特に地方でのAI人材が足りていない。そこでグーグルは国内のAI研究をリードする東大大学院の松尾豊教授らの研究室とパートナーシップを結んだ。研究室で学んだ人材を活用し、少子高齢化や労働人口減少など、地方の課題を解決する生成AIモデルを開発する。

まず広島県と大阪府で始める計画で、大阪府では雇用のミスマッチ解消に生かす。27年までに47都道府県それぞれで課題解決モデルを構築する。

グーグルは米国外で初めての拠点を01年に日本で設立した。それ以降、日本での事業展開に力を入れてきた。現在の生成AI「Gemini」の前身である「Bard」は、英米の次に日本と韓国で展開した。22年には日本リスキリングコンソーシアムの立ち上げを主導し、産官学を巻き込んだ人材教育にも乗り出している。

グーグルなど米国の巨大テック企業は日本のAI市場の成長を見込んで巨額の投資を計画する。グーグルは日米をつなぐ海底ケーブルに約1500億円を投資する。マイクロソフトは日本国内のAIやクラウド基盤強化に2年間で約4400億円、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はデータセンターへの設備投資に27年までに約2.3兆円を投じる。

グーグルやアマゾンのサービスは人々の暮らしを大きく変え、生活は便利になった。「日本推し」にも見えるグーグルだが、独占への批判も根強く、欧米同様に規制当局による包囲網が国内でも強まっている。

6月には巨大IT企業の独占是正を狙う新法「スマホソフトウェア競争促進法」が成立し、25年末までに施行される予定だ。4月にはグーグルが公正取引委員会から初めて行政処分を受けたほか、ネット上の「なりすまし広告」を大手SNS企業が放置しているとして社会問題化した。

グーグルはソフト、ハード、人材育成のそれぞれの分野で日本でのサービス充実をアピールし、風当たりを弱めつつ、日本市場の開拓を狙う。

(鈴木卓郎)

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