【ニューヨーク時事】米通商代表部(USTR)で日本・中国担当の代表補代理を務めたグレン・S・フクシマ氏は8日までに時事通信のインタビューに応じた。日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収について、11月の米大統領選でバイデン氏が再選すれば「政府が許可を出す可能性は十分ある」との認識を示した。日鉄が全米鉄鋼労組(USW)から支持を取り付けることが条件とした。

一方、トランプ前大統領が返り咲いた場合、買収実現の確率は低くなると予想した。

USスチールが本社を構える東部ペンシルベニアは大統領選の勝敗を左右する激戦州の一つ。フクシマ氏は「両候補にとって重要な州だ」と指摘した。労組票を取り込み選挙戦を有利に戦いたいとの思惑からバイデン、トランプ両氏が買収に難色を示すなど、政治問題に発展している。

日鉄は雇用維持などを表明したものの、労組は「空約束だ」と批判を強めている。フクシマ氏は、バイデン氏が買収を認めるには、支持基盤である労組が雇用に加えて年金などの福利厚生面で日鉄と合意することが必要だと述べた。

トランプ氏が異を唱える理由は「はっきり分からない」としつつも、前政権でUSTR代表を務めたライトハイザー氏の反対姿勢が影響した可能性があるとの見方を紹介した。

買収が国家安全保障に及ぼす影響を懸念する声が一部の連邦議員から上がっていることに関しては、「日本は同盟国。USスチールが造っている鉄は国防に直接関係ない」と強調した。

買収計画を巡り、日鉄は米国以外のすべての規制当局から実行に必要な承認を受けた。現在、米政府が安保上の影響などを調べている。

◇グレン・S・フクシマ氏略歴

グレン・S・フクシマ氏 1985年に米通商代表部(USTR)に入り、日本担当部長や代表補代理(日本・中国担当)として米国の対日・対中通商政策に携わった。USTRで約5年間勤務した後、在日米国商工会議所会頭やエアバス・ジャパン社長などを歴任。現在は米シンクタンク「先端政策研究所」の上級研究員を務める。カリフォルニア州出身の日系3世。74歳。

インタビューに答えるグレン・S・フクシマ氏=5日、米ニューヨーク

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