この種の不正の病根はどこまで伸びているのだろうか。そんな疑念を持たざるを得ない事態が白日の下にさらされた。近年、自動車業界など日本の製造業で相次いで発覚する品質を巡る検査不正だ。
3日にはトヨタ自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の5社に関して、車両の量産に必要な「型式指定」に関する不正が明らかになった。4日に管轄の国土交通省がトヨタの本社に立ち入り検査を行った。ほかの4社についても順次検査する方向だ。
言うまでもなくトヨタやホンダは日本企業の代表格だ。これまで日野自動車やダイハツ工業などトヨタのグループ企業で不正が発覚していたものの、同社自体は安泰だと見なされてきた。
消費者や関係者の信頼を裏切ったことを猛省すべきだ。自動車産業は日本の製造品出荷額の2割近くを占める。出荷停止が長引けば経済に悪影響を与えかねない。
一方、品質不正と言っても悪質性の軽重は様々だ。今回発覚した行為の中には、あえて規定より難易度が高い検査を自主的に行った結果を反映させたものも含まれる。現場の担当者は自らより高いハードルを課し、品質を担保しようと考えたのかもしれない。
だが、ルールはルールだ。業界の決まりごとより自社の方法が優れているというおごりはなかっただろうか。せっかくの企業努力がかえって信用を失う原因となった格好だが、皮肉な結果という言葉だけではかたづけられない。
所定の手続きを無視するようでは、そもそも認証制度の意味がなくなってしまう。トヨタの豊田章男会長も3日の記者会見で「自動車メーカーとして絶対にやってはいけない」と悔やんだ。
認証制度のあり方に時代遅れな面があるとの指摘も多い。そうだとしても、まずはルールの変更を堂々と訴えかけるのが筋だ。
今回、5社で不正が発覚したきっかけは、国交省が求めた内部調査だった。三菱自動車で燃費データの改ざんが発覚した2016年以降、自社を顧みる機会は何度もあったはずだ。それでも病根をあぶり出すことはできなかった。
「不正の撲滅は無理だと思う」(豊田氏)という発言もあったが、車造りのプロセスを管理する体制づくりや投資を怠ることは許されない。相次ぐ品質検査不正を教訓に、自動車産業は過信を捨てて再出発するべきだ。
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