米グーグルが国内に新設したデータセンター(千葉県印西市)

米IT大手が日本でデータセンターを整備する計画を相次いで公表した。各社の投資金額の合計は円換算で4兆円を上回る。建設など一過性の需要を取り込むだけでなく、デジタル技術の普及が加速する好機を生かして製品やサービスの付加価値を高め、持続的な経済成長の起点としたい。

アマゾン・ドット・コム傘下のアマゾン・ウェブ・サービスが5年間で2兆2600億円を投資すると公表し、マイクロソフトは2年で29億ドル(約4500億円)、オラクルも10年間で80億ドルを投資すると発表した。

背景には生成AI(人工知能)の普及などでクラウドコンピューティングサービスの需要が高まってきたことがある。プライバシーや安全の確保を目的に、重要なデータを国内で保管して処理する流れが強まったのも追い風だ。

米IT大手の投資拡大は世界的な動きとはいえ、日本も対象に加えたことはまず評価したい。政府などによる働きかけが一定の効果をあげたといえるだろう。

一方で課題もある。ひとつは米IT大手に支払うクラウドの利用代金などが増え、いわゆる「デジタル赤字」が膨らむことだ。付加価値の向上やコストの削減により、投資を上回る成果をいかに得るかが重要になる。

米国ではネットフリックスがアマゾンのクラウドを使い、動画配信の最大手へと育った。日本でも利便性が高まるクラウドを活用し、国際的に競争力がある産業を育てる戦略が急務だ。

もうひとつはサーバーの稼働や冷却に使う電力量が大幅に増加することへの対応だ。特にAIの開発や利用に必要な半導体は現在、電力消費が多く、国内のデータセンターの電力需要が約20年で5倍超に増えるとの予測もある。

脱炭素との両立も欠かせない。伊藤忠商事の出資先企業などは、このほど太陽光発電所でつくった電力の供給でグーグルと合意した。三菱商事もアマゾンと同様の契約を交わしている。こうした取り組みを増やしていきたい。

日本が得意とする省エネ技術の開発を着実に進めることも重要になる。国内では三菱重工業などが特殊な液体を利用し、サーバーを効率よく冷却するシステムを手がけている。こうした技術は世界で需要がさらに高まる兆しがあり、開発やコスト削減を加速して普及につなげたい。

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