大谷翔平選手と山本由伸選手が移籍した大リーグ・ドジャースの本拠地スタジアムにあるVIP席のメニューに、茨城の地酒が加わった。

 全国各地に名高い酒どころがある中、茨城の酒が選ばれたのはなぜなのか。

 今季開幕戦から米ロサンゼルスのドジャースタジアムのVIP席メニューに新たに名を連ねたのは、吉久保酒造(水戸市)の「一品純米大吟醸」。水戸産の米と笠原水源の超軟水を使用しており、フルーティーではっきりと米の味を感じられるのが特徴だ。

 吉久保博之社長(43)によると、大谷選手らの移籍に伴ってVIP席メニューに日本食が加わる際、米国でソムリエのテイスティングを経て「一品」が選ばれたという。

 VIP席のチケットは高額だが、「一品」(720ミリリットル)は90ドルで提供されているという。

 「一品」が日本を代表する酒としてドジャースタジアムに採用された背景には、吉久保酒造の海外戦略があった。

ライバルは白ワイン

 吉久保酒造は寛政2(1790)年創業。年間生産量は32万リットルほどで、12代目の吉久保博之社長は「手作りの過程が多く、酒蔵としては小規模」と話す。

 20年前に販路を海外に広げ、今は約4割を海外に輸出する。米のうまみを強く出し、味の濃い外国料理にも合う酒を開発した。外国出身の友人に意見を求め、10年ほど前には鎧(よろい)や兜(かぶと)をイメージした黒と金、赤色のラベルに変更。水戸を思わせる梅の枝がポイントだ。

 吉久保社長は「競合は白ワイン。この巨大市場に食い込まなければ日本酒が広く飲まれるようにはならない」と考えた。2017年にはワインの国際大会で最高金賞を受賞。今回採用された「一品純米大吟醸」は、そんな海外戦略を詰め込んだものだった。

 30日には県庁を訪れ、大井川和彦知事にメニューへの採用を報告。吉久保社長は「酒どころとして有名ではない茨城の酒造。日本選手の活躍とともに、こうして認められたことをうれしく思う」と笑顔で語った。(宮廻潤子)

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