LINEなどを使う「SNS型投資詐欺」の被害が急増している。警察庁によると、今年1~3月だけで219億3千万円の被害があった。朝日新聞記者のもとにも昨年11月、不審なLINEグループから通知があった。以降、4カ月にわたり、その実態を取材した。

 2023年11月21日午後、LINEアプリの通知が鳴り、「投資」の名前がつく不審なグループに勝手に追加された。

 現金をだまし取る詐欺かもしれない――。こうピンときた。当時、記者は警視庁担当として、同僚と知能犯罪や悪徳商法などの取材を続けていた。

 ただ、善意のグループである可能性も捨てきれない。

 個人的には、NISA(少額投資非課税制度)の拡充などで、投資信託などの投資に関心がないわけでもなかった。

 すぐにグループを抜けることもできたが、真偽や実態を探ろうと、あえて残ることにした。

 「友達の招待で参加しました。家に猫を2匹飼っています。株式投資は初めてです」「同じく新人です」「20年ほどの株取引経験があります」

 グループには次々と投稿があった。一方で、勝手に追加させられたのか、無言で退会するアカウントも相次ぐ。

 参加から30分ほどして、「先生のアシスタント」を名乗るアカウントが投稿し始めた。このアシスタントによると、グループには「古いメンバー」も「新人」もいるという。

 「先生」についてはこう紹介した。「講演会やセミナーの準備でお忙しいご様子です。後日、今までのように情報発信を再開するそうですので、それまでもう少しだけお待ち下さいね」

 複数のアカウントが先生を称賛した。「おかげで昨年かなり収益をあげました」「情報とアドバイスがとても分かりやすいので、毎回かなり助けられております」

 アシスタントは、グループは少なくとも3年前から存在し、「先生の情報発信や投資に関するご指導を共有していく」のが目的と説明した。

 先生のプロフィルとされる資料が何度かグループに投稿されていた。

 日本の大学を卒業して米国で日本経済を研究し、海外でファンド事業のマネジメントをしたり、複数の投資会社で投資コンサルをしたり。機関投資家からの預かり資産総額は900億円を超える。

 こんな説明だった。ただ、具体的な組織名や在籍時期はほとんど書かれていなかった。

 いったい何者なのか。先生と記者の4カ月にわたるメッセージのやりとりが始まった。

 こうしたLINEグループについて、警視庁の捜査関係者は、詐欺の可能性があると指摘する。

 LINEを運営する「LINEヤフー」によると、LINEは電話番号やIDがあれば相手の承諾がなくても「友だち」登録でき、グループに追加できる。同社は、電話番号やIDの検索、友だち追加の許可設定をオフにするほか、知らない相手からの連絡を防ぐ「メッセージ受信拒否」の機能を勧めている。

 警察庁によると、最近は、著名人になりすまして投資を呼びかける手口が目立つという。

 被害にあわないために、振込先が個人名義の口座だったり、振り込みのたびに口座の名義が変わったりする場合、詐欺を疑うよう呼びかけている。

 同庁は今年3月、全国の警察に捜査態勢の構築を指示。事件で使われた口座やSNSのアカウントの凍結、偽の広告の削除依頼などを進めている。

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