◆物価高深刻、賃上げの波及も不十分
1~3月期の実質GDPは、数値の半分以上を占める個人消費の低迷が続いていることを示す結果となった。個人消費の4四半期連続マイナスは、米国発の金融危機だったリーマン・ショック前後以来15年ぶりだ。それだけ、今の低迷を招いた物価高の深刻さを表す。 今年の春闘では大手企業を中心に大幅な賃上げが実施された。だが、物価変動を除いた実質賃金は24カ月連続のマイナスと、物価上昇を上回る勢いはない。雇用の約7割を占める中小企業への波及が不十分だからだ。 政府は物価高対策として、今年6月に一人当たり4万円の減税と給付を行う。ただ、その実施とほぼ同時期には、電気・ガス料金に対する政府の補助金が終わり、値上がりする。食料品などの値上げもいまだ収束する気配もなく、減税の効果が相殺されかねない。 物価上昇だけが節約志向の原因ではない。バブル経済崩壊後の「失われた30年」に形成された価値観は根強い、とあるエコノミストは指摘。人口減少する日本の成長力などへの不安も消費への意欲をそいでいる。 仮に効果があっても、減税は一時的な対症療法にすぎない。賃上げの持続化や中小企業への浸透はもちろん、少子化を食い止めるような抜本策を政府が打ち出すことができなければ、不安の根底にある節約志向の払拭は難しい。(山中正義)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。