東レは13日、2025年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期の3.7倍の810億円になる見通しだと発表した。機能化成品が伸び、炭素繊維も回復する。27年3月期まで3年間で、全体の半分にあたる約1000億円の政策保有株を削減し、すべて自社株買いに充てる方針を示した。低迷するPBR(株価純資産倍率)の改善につなげる。
政策保有株の資本に占める比率は27年3月期に約5%(前期は11.4%)に下げる。政策保有株は定期的に売却しているが、今回のような大規模な計画は珍しい。同日開いた投資家向け説明会で、大矢光雄社長は「可及的速やかに進めていきたい」と話した。
13日正午の発表を受け、株価は一時前営業日比9%上昇し、年初来高値を更新した。自社株買いは14年以来になる。当時の実施額は200億円だった。アイザワ証券の三井郁男投資顧問部ファンドマネージャーは「保有資産圧縮と同時に大きな還元に踏み込むのは従来にない大胆さ」と話す。
業績はV字回復する。今期の純利益は810億円と前の期(728億円)も上回り、国際会計基準ベースで最高だった22年3月期の842億円に迫る。日本基準も含めた最高益は17年3月期の994億円だった。
売上高にあたる売上収益は6%増の2兆6200億円を見込む。市況や販売数量の回復、値上げなどを進め、全5事業(その他除く)で増収増益を見込む。配当は前期と同じ年18円とする。
注目される炭素繊維複合材料事業の利益は210億円と59%増える。民間航空機向けが回復し、風力発電翼向けなど汎用の炭素繊維での減損損失もなくなる。萩原識代表取締役は汎用向けについて「24年1〜3月期は回復基調。今期後半から一段の回復が見込める」と話した。本格回復は来期になるとみる。
炭素繊維の主力販売先である米ボーイングの中型機「787」では不透明感がある。4月末のボーイングの発表では生産ペースは鈍る見通し。品質検査問題が浮上したことも懸念材料だ。炭素繊維を納入する787の機数について、萩原氏は「今期は60機程度を前提とし(ボーイングの)最新計画より堅めだ。下振れした場合は産業用途やスポーツ向けの拡販などでカバーする」と話す。
樹脂などの機能化成品の事業利益は595億円と62%増える。家電など幅広い用途で使われるABS樹脂では透明度の高い高付加価値製品が伸び、値上げも進める。繊維事業は車用エアバッグ向けなどが回復する。
同日発表した24年3月期の連結決算は売上収益が前の期比1%減の2兆4645億円、事業利益が7%増の1026億円、純利益が70%減の218億円だった。
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